ルルよ

愛猫のルルが旅に出たので
僕もそろそろ身支度を始めます

紫煙の向こう側をそろそろ知らなきゃいけないから

君には暗号だけ残しておきます
グリル転置式で解けましょう

貴方からの手紙は 燃やしました
宝物しかない倉庫は 燃やしました
お金は全部 燃やしました
賢くあるためにしょうがなかったのです

大して弾けもしない ギター一本だけ持って
さよなら僕は旅立ちます

眩暈がしたので
もうすぐなのかもなぁと思うのです
世界と僕
先に終わるのはどちらでしょう

ルルよ、何処まで行ったんだい
是よ、まったく悲しいことに
世界と僕とを肯定する言葉が見つかりません
分厚い辞書にも 朝焼けの空にも どこにも無いのです
ただ独りよがりなアキアカネの羽根にだけ
頼りなげにふわふわ載っているのです

鼓動の変拍子に合わせて歌うために
小さな手で弦を弾きました
Amを押さえました
悲しみは一層増して
あとからあとからこみ上げる涙を止める術も知らず
ただルルの歌声を思い出すのです

決して見飽きること無い夕暮れに
いつもの風景が溶けて行く時
さよなら 僕は 旅立ちます