深海魚

宇宙が広いだとか

地球が丸いだとか

そんなこと知らない

深海魚は

空の色を知らない

そよ風を知らない

満月がほころんでも

なんにも見えないから

目覚めを忘れてる

太陽がゲラゲラ笑っても

なんにも聞こえないから

安穏を失くしてる

深海魚は

虹の色彩を知らない

雨上がりの雫を知らない

海底が暗いだとか

水圧が半端ないとか

そんなこと知らない

知らないことを知らない

深海魚は

勝手に脳幹に棲みついて

私を夜の浜辺に連れてった

水面に私が浮かんでた

「ほらごらん

彼女はいっとう幸せなんだ」

深海魚は何も知らずに

今日も明日も深海魚

変われずに変わらずに

きっとずっと深海魚

私もきっと深海魚

肺呼吸が

そろそろ苦しい