「これが私の自由です」

夏休みに小学生たちの頭を悩ませるものと言えば、「自由研究」と「読書感想文」だと思うのですが、例にもれず私もそんな小学生の一人でした。

読書感想文は、「クレヨン王国」シリーズが好きすぎて、特に「月のたまご」はPART8まであったのですが、学校や市立の図書館に通い詰めて夢中で読破したほど好きだったので、「文部省推薦」(当時は「文部科学省」ではなかったのね)の本じゃなくても、自分が読みたい作品で書きたい感想を書く! というカワユイ意地からひたすら「まゆみの強さと三郎の魅力」について書いておりました。今でいう「推し」ですね。

あれこれ書くのは昔から好きだったので読書感想文はまだよかったのですが、私を深く悩ませたのが自由研究でした。今のようにキットが売られていたわけでもなかったので、非常に苦闘しました。

ここで、自由研究の内容の6年にわたる歴史をプレイバック!

1年生:身近にハムスターを飼っていた友達がいたので、「ヒマワリなどいろいろな植物の種を食べてみた」感想を、種のイラストとともに絵日記風に作成しました。「かぼちゃは なかなかの ものです」のように、若干海原雄山目線で記していたそうです。

2年生:紙粘土で「空想上の生き物」を作りました。翼が映えてて鱗があって足は4輪駆動。「陸海空オールマイティー」な「なにか」を生み出した記憶があります。お顔は、当時大好きだった「きんぎょ注意報」のぎょぴちゃんに酷似していました。

3年生:この頃から電車好きの素養があったようで、「一人で東西線を各駅すべて降りて、出口の東西南北を調べる」という、地味だけどインターネットのなかった時代だからこそ実現した試みでした。当時は「妙典駅」はまだありませんでした。

4年生:3年生時の実績に手応えを覚えたことから、「友達と二人で高円寺以西の路線を探検する」ことにトライしました。しかしながら、「行こうと思えば乗り換えて乗り換えて線路は続くよどこまでも感」におののいた私たちは、結局「三鷹駅」で引き返し、その代わりに周辺のおススメグルメをリサーチしました。

5年生:4年生時に一緒にトライしたその友達と、商店街を歩く主婦のみなさん100人に「出身地・この商店街に希望すること・夫への愚痴」を訊いた結果を模造紙にグラフでどーん!と書きました。集計したら108人だったんですがそれは煩悩とは無関係です。

6年生:この歳になってくるといろいろこねくり回してあれこれ考えてしまうお年頃じゃないですか(同意を求めています)。で、11歳だった私は気づいてしまいました。

「そもそも『自由研究』というのは自由に何かを研究せよということではなくて、『自由とはなにか』を『研究せよ』ということなのか……?」

ええ、それはもう面倒なお子様でしたわよ。

私はしばらく考えました。そうすると「自由とは」だの「研究とは何を指すのか」など、いまならGoogleでぺろっと調べられそうなことを、あれこれ図書館に通ったり周囲の友人や大人に聞いたりしてヒントを集めました。

合点を得たのは、夏休みに連れて行ってもらった那須のニキ美術館(現在は閉館)で出会ったニキ・ド・サンファルの芸術作品たちでした。

とにかくそのアグレッシブな色彩や常軌を逸した造形に圧倒され、ふと私は思い至りました。

「あ、これだ」って。

当時こそ明文化はできませんでしたが、自由というのは、「じ・ゆ・う」「jiuu」「freedom」という「言葉」を借りて存在する「概念」というおばけだから、それこそ「なんでもあり」で「なんにもない」のが「自由」なのかな? とか。

もちろん小学6年生の私が、やれ自由権規約だのカントだのルドルフ・シュタイナーを知っていたはずもないので、こういったことは「ふわふわとした、でも確かな感覚」として腑に落ちました。

そして夏休み明け、私が提出したのは一冊のまっさらなノートでした。

担任の教師は「これは、どういうこと?」と聞いてくれました。こちらが「ふざけている」「手を抜いた」などと頭ごなしに決めつけず、笹塚が何かしらの意図をもってこのノートを出したのだろうと考えてくれたのでした。

私は言い切りました。

「これが私の自由です」

あーーーーー

わーーーーー

もーーーーー

なんなん?

そうです。小6にして私の「こいつなんなん?」的な萌芽は、ぴょこっと始まっていたようなのです。その後案の定(?)ひっちゃかめっちゃかな道のりが待っていたんですから、本当に面白いもんだなぁと思います。

って、こうして今振り返ってみても、「自由研究」は夏休みのアクティビティとしてめっちゃ楽しかったし、それこそ「自由」なんだからキットとか既製品で済ませるのも自由だし、何を表現しても自由だし、子どもの可能性をぐいっと引き出すには最高な宿題だったよな、と感じています。

夏休みは残り10日間ちょい。自由研究でお悩みの皆さまがもしいたら、

「オリジナリティの高さ」「面白さ」「他人からのツッコミどころ(余白)」を「いかに楽しいか」という脈絡・基盤で企画してみたらどうでしょうか。

まぁ、どんなコンセプトでも「自由」ですから、楽しめばいいと思いますです。

今もしも私が何かせよと言われたら、安価の既製品のセーターを買ってきて、その編み目を分解して毛糸にして、その過程をスマホで録画したものを逆再生して「セーターを編んでみた(とされる)動画」を制作したいです。

それか、100均で置時計を買ってきてそれを分解する過程を録画したものを逆再生以下略。

なんだろう、「破壊と再生」的な心境なのかしら……。まあ、暑いしね!(関係ないね!)

それでは皆さま、水分ミネラルしっかり補給つつ、ほがらかな休日をお過ごしくださいませ。