シューゲイザー

饐えた銀河の隅っこでうずくまる
私の影を踏みつけて過ぎてゆく人々よ
みんなの幸せを願っています
風邪をひいてしまったから
私、赤く腫れた両目で見つめるだけですが

青空のこと
黄色いクラシックカーのこと
だいだい色のポピーがそよ風に揺れて
崩れてゆくアスファルトの破片の
ひとかけらを口に含む老女のこと

水瓶座のこと
霊合星人のこと
しょっちゅう脱落する記憶と助詞、
読み違えられた尊厳と意地と偽善、
容赦なく愛を注ぎまくる人の
左腕に遺る噛みつきの痕跡、

「なんてことはないさ、なんとでもなるから」

この言葉で誤魔化し続けられてきた
苦痛
屈辱
快楽
背徳
勝手にはじき出されていた市場価値

これら全てが
「私」という人間の
代名詞に過ぎないと気がついてしまった朝に
全身で浴びる底なしの絶望感すら
鼻唄に変えてみせた「あなた」が
今はもう
誰よりも何よりも恐ろしくてたまらない

震える手を握りしめてくれたって
縮こまる肩をそっと抱いてくれたって
私には生きる希望が湧くだけだ

モラトリアムがどんなに延長されても
私が私であることをやめられないのは
愚かなことでしょうか
それとも
幸甚なことでしょうか

ああ、この頃はやけに眩しいなと
初夏の青空を見上げるたびに
視界の端で必ず
ギロチンの刃がしらじらと
こちらに笑いかけているから
私にはもうそれから逃れる術はなく
下を向いたままニコニコと
機嫌よく呼吸し続けるほかに
「あなた」と仲直りする方法が
まるで思い浮かばないのだ

エゴイストを何よりも蔑んでいたはずの人が
甘言で私を無理くり導こうとしたので
私、駅前のスタバの前に偶然落ちてた鉈で
ご縁ごとぶった斬ってしまいました
それでもずっとずっと笑っていたから
たぶんあの人はもう
幸せにしかなれないのでしょう
可哀想なことをしたかしら……

街が痙攣している
私は産まれる場所を間違えたらしい

もうなにかとどうでもいいし
どうにかしてほしいとも思うけれど
あのギロチンに手をかけてくれるのは
どちらの神さまになるのでしょうか

住所がわかれば手紙を書くし
IDがわかればLINEを送ります
一分一秒、一刻でも早く
名前すらつかない罪状に因る
生あたたかい刑を執行してくださいと

それが叶わないものだから
今日も明日も私は
下を向いたままで
ニコニコ
ニコニコ