バイバイ、wi-fi

バスターミナルで誰かを待つふりをして
老婆が巧妙な罠を張る
家路を急ぐ人々が一人残らず
孤独に苛まれますようにと
願いを込めた売り物のマッチ

バスターミナルは前しか見えない人だけ
老婆が何度も言問する
家路を急ぐ人々に一人残らず
そんなにWi-fiは優しいのか
私の手料理よりも茜雲よりも

いびつな形で生まれたから、
いびつなまま生きていくしかない、
流星が流れ弾になって私を撃ち抜いたのは、
そのことに気づいてしまったからなんだよ。

☆彡

バイバイ、Wi-fi
この星に重力があって良かった、
私にも地球という居場所がある、
寂しさも平等に分けあってゆく、
切りそびれた爪で引っ掻きあう、
それでも孤独は死んでくれない。

マッチの箱にはいつの思い出
「うとがりあ」の文字列が、
もはや別れの挨拶となって、
家路を急ぐ人々の口からダダ漏れてゆく

バイバイ、Wi-fi、
誰とも繋がれないのなら、
お前ともさようならだよ。