最終章 誕生

罪と罰が因果で繋がっているものならば、彼を生みだした世界は相応の報いを受けることになるだろう。
彼の誕生を祝福しないセイは、総て否定されるのだ。それは理屈や理論の通用しない、魔都市・東京で起きる新たな伝説。人々の畏怖の対象であると同時にただの暇つぶし。そして、何てことない一つの出来事。
「君の愛と正義は、何処に在るの?」
傍らにはいつも、愛しい人の首の入った白い箱。
決して満たされない鳥かごに、両手を奪われたのは誰?

その日もミズは、口やかましい死者相手にうんざりしながら、メスを握っていた。

約束と惨劇は、いつも雨の夜に。いびつな永遠を歩き始めた彼の、最大の過ち。彼女にいつの日か自分が認識され、肯定されるその日が来るという――その誤答を指摘したものは、ことごとく彼に否定されるのだ。
「僕を忘れないで」
という、著しい矛盾と共に。

そして始まる新たな舞台へ、選ばれてしまうのは誰でしょう?

貴方が誰の笑顔も思い出せないのは、何故。
寂しいのですか? だから儘に従うのですか、いびつな天啓に。
あの日の途絶を覚えていますか。私は、息絶えてなお、貴方を苦しめたくはない。

私は待っています。貴方の認識できない世界で。
私は待っています。貴方がその過ちに気付く日を。
私は待っています。貴方に再び正しい季節が巡ることを。

「君を、待っているから――」