第二章 洗脳の方法

「保険証無いの? じゃあ悪いけど一旦全額支払ってもらうよ。後日保険証見せてくれれば、差額分は返ってくるからね」
受付のおばちゃんは相変わらず無愛想な応対態度だ。葉山は「すみません」と5千円近くを支払った。処方箋のない診察代にしては高すぎるが、あの部屋での「診察」を考えれば安すぎる授業料である。
クリニックを一歩出ると、途端に都会の喧騒が葉山を包んだ。ただ通り過ぎていく人や車を眺める。その目の奥に、隠しきれない赤黒い感情を宿して。
「彼」は堪え切れなくなってニヤリと笑った。
俺の正義を貫くための――
「セカンドステージを始めようぜ、葉山」
この季節にしては生温かすぎる風が、葉山の鼻腔をよぎる。纏わりつくようなその感覚を、しばし「彼」は楽しんだ。

ミズは利恵子の遺体の解剖をしながら、長くため息をついた。
「……正義だの信念だの……いちいち面倒ね」