いい子

あなたがどんな造形をしていても
私にはわかるから
もう着飾るのはやめてください

あなたがどんな憧憬を抱いていても
私にはわかるから
もう浸るのはやめてください

あなたにしか見えない姿を
きちんと見せてみせましょう
もちろんまばたきなんて許しません
愛は液漏れのようにぽとぽとと落ちてくる
しかもアスファルトの上みたいに
油断すればすぐに干からびるから
丁寧な手入れが必要なのです

ところで、私の前に置かれた白い箱も
液漏れを起こしていますが
まさしくそれがあなたですね
私にはわかるから
もう誤魔化すのはやめてください
あなたが真四角であれ
無様な多角形の空間図形であれ
私にはわかるから

どんな人混みに紛れても
あなたが私を想っていることなんて
いとも簡単にわかります

プログレしか置かない神保町のレコード屋の
隅に設えられたマネキン群の中で
lalala lalalaと歌いながら
不規則に笑ったり泣いたりして
痙攣しているのがあなたでしょう

あなたの憧れた胎内には
もうパブロフの犬が棲みついて
拍手の合図で泣くようなので
都合のいい時に手を叩いてくださいね

(私の瞳は、愚かさに眩みっぱなし!)

何も知らなきゃよかったよ
なんなら私も犬になりたかった
真四角の白い箱に収まって
ワンキャン吠えるだけの
どうでもいいひとつになりたかった

(あなたに訊ねないとわからないの)
(私のどこにどんな意味がありますか)
(光はどちらですか)
(命は優しいだけですか)
(逐一案内用図を出しておけ!)

あなたがどんな惨めさを露呈しても
私にはわかるから
私があなたにたった一言を
伝えるためだけに此処まで来たのだと
いつか秋桜みたいに笑えるように

やがて否が応でもわかる時がくるんだ
忘れ物ばかりを追いかけているうちに
日が暮れ続けることがキモチイイって
だから同じ場所に居場所と名をつけて
何もかもを肯定しまくることで
見ないふりが上手くなっていく
それにすら合格点を与えるのですね
何もかもから目を背けて笑うように

拍手をしたなら
あなたが鳴いた
そこには確かな愛の証明として
枯葉に紛れて膜の残骸が落ちていた
私はこれ以上ない破顔でもって
あなたをこうして否定する

「おかえりなさい」