スーパースター

私がいなくなっても

大丈夫だってことを

海馬の奥にまで思い

知らせてくれたのは

間違いなくスーパースター

誰よりも夢の味を知ってて

量産方法をばらまいてから

私にとどめを刺してくれた

何も変わっていないんだ

冬の始まる匂いも枯葉の

気まぐれなダンスもあと

殺し文句の流行り廃りも

地球の形も夜空の意味も

遠ざかる記憶をリセットするための

パスワードにスーパースターの秘密

本人確認として差し出した嘘と嘘が

すでに裸で真実に根を下ろしている

優しくなりすぎた私は早速

ホームセンターまで行って

恋をしましたと言い訳して

ピカピカの鉈を買いました

空は割れなくても鳴いていて

私はいい歳をしてフリル付の

スカートとロングブーツとを

身にまとい鳴き声をBGMに

青い切っ先をリズミカルにね

振り回しながら歌ってみるの

天使になれなかった私です

天使になってしまった子の

隣で笑った日々まるごとを

鉈で祝福したいと思います

街は思考停止して踊り続ける

言葉は擦り切れてゆくばかり

悲しみは悲しみを包含せずに

青いビロードとして巻かれて

クリスマスプレゼントとして

眠り続ける星に贈られるのだ

(切手は剥がれ落ちてしまった)

永遠? あるよ。

今さっき、鉈の

錆になったけど。

スポットライトがあたるのは

私じゃなくてスーパースター

締めきれなかった蛇口からは

ぽたぽた誰かの残滓が漏れて

私はやっぱり思い知るのです

季節に置き去りにされる訳を

暖色系シャドウがトレンドで

だから青い鉈しか売ってない

スーパースターは何もかもを

知っていたのでしょうだから

霜月の果てる前に私のために

自らここへ降りてきてああ!

もちろん手にかけました

それでもスーパースター

鉈の汚れに落ちぶれても

尚も唯一無二に輝いては

私の海馬の奥を掻き混ぜ

祝福してくれるのですね

ありがとうスーパースター

あなたさえいなければなあ