1

蝉時雨まだ許されていない午後伝う汗まで私を責める

2

わからないことがわかると宝物ひとつ失くした気持ちが実る

3

月まででいいから早く連れてって片道切符で構わないから

4

老いという現実はにび色をしてどこへ行っても視界に入る

5

アスファルト一滴落ちる汗はまだ容赦を知らない子どものように

6

手を叩き歓喜するひと手で抑え嗚咽するひと私は迷子

7

いつもより目深にかぶった帽子 きみ、よくないことを考えてるね

8

嘘つきも声が大きければ道理になると早く教科書に書け

9

眠るきみ眠れない僕 優しくはなれない夜を迎えたようだ

10

見上げればまあるい月が人々の右往左往を嘲っている