鼓笛隊

1 背伸びして一口すするカクテルでちゃんと酔うから馬鹿にしなさい 2 見上げればコールドムーン ラジオから知らない人の結婚報告 3 知らないと知りたくないのあいだには八分休符が群生してる 4 笑い声泣…

1 アルペジオ星を追った夜 切なさを携え息する獣が二匹 2 流星は儚いねって泣くきみの保障されない明日を想う 3 なぜ星が美しいのか(命から最も近い場所にあるから) 4 星がいまきみのなかでハレーショ…

M

1 一滴の染みを気にする君なのに今宵笑って雨に打たれて 2 ボージョレを飲み下すのど動くたびグラスを割って溺れたくなる 3 許されるために上書きをしてゆく記憶(ずるいだけだよ) 4 塩味を涙の味と言い…

1 玉ねぎの皮を剥く手が止まらない流星群の夜のキッチン 2 サイレンは他人事として鳴り響く禁じられないシーソーゲーム 3 街宣車その勢いで火星までいってらっしゃいというさよなら 4 ツユクサの青をヒー…

1 水槽の鯵と目が合う天国の入口にいると自覚している 2 夜空には無数の目玉もうやめて気が済んだって破裂しないで 3 ランドルト環のぱっくりしてるとこに指を入れたらぶにゅっとしてる 4 眼球がごろごろ…

例外

1 いつか来る別れのために歯を磨くショートフィルムに収まりたくて 2 抱きあえて僕らよかったいつの日か別れが来てもこれは永遠 3 思い出になるくらいなら赤ペンででっかいばつをつけてください 4 たいて…

食卓

1 ふっくらと焼き上がったね僕のためだけに死んでくれた秋刀魚ラブ 2 それぞれの自宅に小さな火葬場がグリルという名で存在をする 3 おいアヒルお前の兄は目の前の丸焼きとして立派であるぞ 4 カブトムシ…

果実

1 私です、ブルーベリーをジャムにするつもりもないのに潰したのは 2 手紙には書けないけれどやりました 柘榴朽ちれば赤いじゅうたん 3 できるだけ早く助けてくださいね ジャムにするには甘すぎるから 4…

カーテン

1 「天国をまだ知らないの」「そら、ええな」天使にも見るダイバーシティ 2 待合のアクアリウムをじっと見る きっと今ならショパンが弾ける 3 ポタージュが恋しくなれば記念日を忘れることも愛しさのうち …

すっぴん

1 すっぴんで葬った過去 果てしない季節の巡りに逆毛を立てる 2 ラジオからやっぱりきみのSOS 聞こえないふりして眠りたい 3 ワイシャツのボタンを掛け違えている 気づいたけれど教えてあげない 4 …