仕組み

1 聞こえないふりを貫け嗤い声はやがて必死な声になるから 2 鉄線の上で身動きしない鳩の代わりに空を汚しにゆこう 3 ハート型の雲よ浮かぶな結局は消えてしまうとばれてしまうよ 4 彼岸との接岸点に立っ…

1 蝉時雨まだ許されていない午後伝う汗まで私を責める 2 わからないことがわかると宝物ひとつ失くした気持ちが実る 3 月まででいいから早く連れてって片道切符で構わないから 4 老いという現実はにび色を…

金魚玉梳かれる髪のきらめきよ 公園に休符遊ぶか夏祭り 夏の星いのち巡ってまばたきよ 不可逆か月を睨んでアゲハ蝶 笹舟に託す吾子の灯ほたるとぶ 夕立がなぐさめとなる帰り道 三拍子最後の電話精霊馬 怪談か…

1 凪を待つ蝶々みたいに呼吸する 明日いいことありますように 2 死にたさをまだ剥がれないかさぶたの下に生まれる皮膚は知らない 3 きみが今どこで誰と何をしているなんて知らない(西風よ吹け) 4 壊れ…

盛夏

蝉時雨どこに終止符置くべきか 祈りの日したたる汗のきらめきよ 後悔をしてこそ響く遠雷ぞ 夢さめて氷水飲む喉もとよ 午睡してバナナひとくち平和の世 手土産のメロン切る母の破顔よ

1 風上にきみがいるなら薔薇だけを選びはだしで走って向かう 2 鮮魚たち値引きシールが光ってる閉店間際のいのちの値段 3 無精卵ずらりと並ぶコーナーの裏で売られる生理用品 4 遺言が暗号で記されており…

窓際でひとり手遊びレモン水 ラムネこそ恋のはじまり告げる味 サイダーを舐めて慄く三毛猫よ 陽光にゼリーを透かす茶色い目 手つなげばアイスも意地も溶けてゆく

初夏

プレリュード移ろいゆくか夏の雲 リグレットつばめよ高く飛んでゆけ 皮膚呼吸フットネイルで思い出す アミュレット摘まれる前に散るかりん アンテナが手折られていま入梅か

天国三丁目

夏が逝ったとの一報に、川辺のススキどもは痙攣して笑っていました。私はその光景を茫然と眺めました。いつかの帰り道の出来事です。 それから間もなく、立ち尽くす場所を求めて私は記憶を捨てるために湖に出かけま…