青春

輝きを強制される僕たちは合言葉まで上書きされる 苦しいと笑ってしまう癖なのに礼賛されて真似までされて 風を受け微笑んだこと馬鹿にされいつの間にやら馬鹿にする側 真剣な悩みを友に打ち明けた 友であったと…

凝視

だれひとり僕を知らない街にいて「こどく」の意味を僕は知らない 輝けと命令するな僕はまだ正しい呼吸もわからないのに 夢を見て初めて気づくこともある 今日も明日も燃えるゴミの日 カラカラと軋み続ける僕の骨…

赤血球

醜さの喩えに使うためだけに私に合鍵なんてくれたの 私たち一緒の部屋で呼吸することさえ今や疑っている なにもかもどうでもいいと言うのならその指輪から外してみてよ 骨として去っていく者 「思い出」と「平等…

バス停

ゆりかごは遠くにあって手を伸ばす理由もなくて夏が去ってく セミたちの声にまぎれてから笑う そんなあなたがやっぱり好きだ 木陰から顔を突き出すバス停よ 優しい街に連れてってくれ 光から逃れるために明日な…

動機

夢を見て夢が破れて夢のなか夢にまでみた夢の世界よ 夏空を誰も見上げず笑ってる ノートの隅が日のあたる場所 あの夜を小瓶に詰めて朝が来ることを嫌がるまぶたに塗った 鐘の音が響いていると君は泣く カーテン…

花火

新しいファミマが街に増えるたび居場所をひとつなくすのは誰 容疑者と呼ばれた夏も青空で入道雲が威張っていたな 斎場の灯りがついた夜にだけ許しあうこと許してほしい ビブラートできない鳥は殺してもいいんだよ…

仮説

間の抜けた顔で剥き出しの惰性をかじる君のまつげに浮く汗 「星座って孤独を繋げてできてるの」君の仮説を葬り去ろう 舌の根も乾かぬうちに発車ベルが聞こえたから旅に出ましょう シャボン玉は壊れるためにあると…

春待ち

嘘つきは美しい花になるはず四月ごろには桜が咲くし 萌芽とはつまり悪意の目覚めだという仮説なら否定しておく 缶コーヒー片手に君を待っていた路地の氷がみたび張るまで クリスマスソングが世界を急かすから自転…

(非)日常

幼な子の見上げる空を飛ぶ蝿の祝福の辞など誰も知らない 瞳から落つる涙を受け止めるためだけに傘を持ってきました 生きている間限定の感覚に溺れぬわけが見つからないわ 左手の薬指には約束が血管を殺し巻きつい…

わがまま

ドキドキはもうしないかもしれないが安定感は誰にも負けない 決断をするときいつも背を押して風さえ吹かしてくれるから好き 口下手もここまでくれば芸術で冬が来るのは貴方のせいだ 枯れ葉舞う日に貴方がそばにい…