純愛とか笑わせんな
「志望動機は?」同期の中竹佳樹がタバコ片手にだるそうに聞いてくる。山積みになった捜査資料にゲンナリしていた僕はため息をついた。「就活生かよ」「社会の平和を守るため、は嘘だろ」「なんでだよ」「志望動機は?」竹中は容疑者を詰問するような威圧的な…
掌編小説 更新履歴刑事,狂気,純愛
trèmolo
どうしても僕のものにならないのなら、壊してしまったほうがいいと考えていた時期もありました。そんな拙いことを、本気で。桜色の袴が似合う人でした。卒業式の学長のスピーチなんてまったく頭に入ってこなくて、僕の視線はその桜色に釘付けになっていました…
掌編小説 更新履歴桜,狂気
監視者
それは、見守りという名の監視ではないだろうか。人籠とでも呼ぶべき部屋の中で、彼はようやく涼を得ている。「外は暑いよ。とても耐えられない暑さだよ。だから君は、その中で穏やかに過ごすといい。ああ、鍵なら預かっておくよ。君が余計なことを考えないよ…
掌編小説 更新履歴狂気,監視
逝 夏
「まるでショパンに対する冒涜よ。そんな弾き方ってないわ」僕の『幻想即興曲』を水玉はそう評した。「そうかな」僕はこみあげる感情と一緒に指先でG#を抑える。反論するわけではないのだが、僕にだってプライドの一片はあるから、つい声が上ずってしまうの…
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