精神科

レイナちゃん

午後9時の消灯から9時間はベッドから起き上がることができない。睡眠の確保のために、就寝前にはしこたま睡眠薬を飲まされるから。錠剤だけで腹が膨れそうな量を、ぬるい水で流し込むのだ。そのあと、「おやすみなさい」といっても夜勤の看護師は挨拶を返す…

ジグソーパズル

完成したら、終わり。終わってしまえば額縁に飾られて風景画未満になる。だからふたりのジグソーパズルが完成しないように、私は思い出のひとかけらをポケットにしまった。「なんだっけ、きみが行きたがってたカフェ」スーパーマーケットで買った惣菜ととき卵…

置き去りバレンタイン

まぶたを開くのが妙に重たい。固いベッドのせいだ。脳みそに機械でも埋め込まれているんじゃないかと思うくらい、毎朝ほぼピッタリ午前5時半に目が覚める。もうずっとそうだ。喉が異様に乾いていたので、亜樹はプラスチックのカップを持ってベッドを降りた。…

つづれ織り

今どき、パソコンはおろかスマートフォンも携帯電話も持ち込み禁止の病棟に、私の大切な人が入院している。彼がいるのは精神科の閉鎖病棟だ。通信機器の禁止は外部の刺激を遮断するためという理由らしいが、本当は病棟の内情を隠したいからではないのか、と疑…

そうだ、温泉に行こう

悠太の告白に対して、仕事から帰ってきた兄はネクタイを外しながら、少し考える素振りをしたかと思いきや「そうだ、温泉に行こう」と言った。日本人は昔から、温泉で傷や病を癒してきたのだと。しかしながら、悠太の病気にも湯治は効果があるのか、甚だ疑問だ…