ゆく夏に穿つ

あらすじ

奥多摩の柔らかな自然に溶け込むようにたたずむ「奥多摩よつばクリニック」には、他の患者やスタッフには知られていない空間が存在する。

「白い部屋」でひっそりと暮らす青年、裕明。彼は解離性同一性障害(DID)であり、「過去と秘密」を抱えながら生きている。

何も変わらない日々を望み続け、それが叶ったところで少しも満たされることのない人生。彼はかたくなに心を閉ざすことで、そんな自分を懸命に守ってきた。

ある日、クリニックに通院している少女、美奈子が「白い部屋」へ足を踏み入れてしまう。

「運命」などと呼ぶには、あまりにもあっけない二人の出逢い。それでも、二人は信じたい。それは間違いなく、お互いの抱く時計と傷とが、静かに交錯し始めた瞬間であったと。

主な登場人物

江口裕明えぐちひろあき(21)
「白い部屋」に暮らす、解離性同一性障害(DID)の青年

高畑美奈子たかはたみなこ(19)
母親からのネグレクトに苦しむ少女

佐久間泰弘さくまやすひろ(??)
かつて、ある一家を襲った殺人犯

有馬ありま ゆき(享年19)
すでに色褪せて遠く去った夏に、自ら命を絶った少女

木内きうち ひろし(53)
「奥多摩よつばクリニック」院長。裕明の「過去と秘密」を知る人物

岸井恵美きしいえみ(50)
木内のパートナーで奥多摩よつばクリニックの看護師長

小泉こいずみ メイ(??)
奥多摩のスナック「りんどう」のママ


プロローグ 告白

第一話 心臓の形(一)遺言

第二話 心臓の形(二)口笛

第三話 心臓の形(三)扉

第四話 心臓の形(四)幻影

第五話 心臓の形(五)絵画

第六話 心臓の形(六)可哀想

第七話 心臓の形(七)斜陽

第八話 過日の嘘(一)夕立

第九話 過日の嘘(二)りんどう

第十話 過日の嘘(三)怖い

第十一話 過日の嘘(四)定規

第十二話 過日の嘘(五)カード

第十三話 過日の嘘(六)声

第十四話 過日の嘘(七)邪魔者

第十五話 慈愛の罠(一)人殺し

第十六話 慈愛の罠(二)邂逅

第十七話 慈愛の罠(三)願い

第十八話 慈愛の罠(四)風

第十九話 慈愛の罠(五)赦し

第二十話 慈愛の罠(六)詩歌

第二十一話 慈愛の罠(七)刃

第二十二話 刹那の灯(一)モザイク

第二十三話 刹那の灯(二)連鎖

第二十四話 刹那の灯(三)帰ろう

第二十五話 刹那の灯(四)虹

エピローグ ゆく夏に穿つ

Re:ゆく夏に穿つ

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