今日の短歌 ばかだなあ

1 かくれんぼ西陽の部屋で首を振る扇風機にも見つけられない 2 「美しい」ほかに言葉が要るだろうか夕立のあとの改札のきみ 3 くだらないことだけをして公園でコンビニアイスを分ける夜が良い 4 わたしには泣いてるように見え…

今日の短歌 疑問符

1 目玉焼きなんて名前をつけるからこの箸だって凶器になるね 2 知らなくていいことばかり知りたいしゲリラ豪雨はやまなけりゃいい 3 直接の死因ばかりを知りたがるこの方々に殺された友 4 死者がみな土に還るというのなら地球…

短歌 戦っていた

1 種を吐くときの顔すら好きだからたぶん飽きてもまた風は吹く 2 蝉を見ろあいつらすぐに逝っちまう叫ばなければ生きてゆけます 3 気づいても言わないでおく傷ついたぶんだけ人が強くなること 4 この夏は地獄の蓋を開けたまま…

垂れ糸

~注意事項という名のプロローグ~ ※これは、虚構を重ねる言の葉によって紡ぎだされる小説の『一考察』に過ぎません。 ~第一章~ 文字という文字に踊らされ続けた とある作家が 辿り着いた一つの真実、 あるいは狂信的な勘違い …

今日の短歌 いつものラジオ

1 風呂上がり米を研ぎつつ聴くラジオいつもの声に励まされてる 2 叫ぶよりもう倒れたい夜だけど深夜ラジオが笑かしてくる 3 通勤のお供はラジオ満員の京王線で笑みかみ殺す 4 三叉路を過ぎればきみがいる/いない/別の誰かと…

桜が咲いたんでしょう

各駅停車新宿行きが 善悪を轢いてくれたなら—— 蝶よ、蛹のまま溶け出でよ 艶めかしく地球へと 四肢を投げ出した女の あるいは黒猫の 若しかして寂しかったのか 特急新宿行きは 善悪正邪を無視して進む—— 雪よ、薄汚れて水に…

る、る、る

彼の唯一の関心は素数である。 る、る、る、と私が歌ったところで全く意味はない(それでも絞りだした悲鳴が歌なのだけれど) 私はあの日あの日あの日幕張付近で京成線の踏切を渋滞する車の後部座席から眺めており――遮断機がひどく疎…

名前を呼ばれても

挨拶のない夜明けに 一途な愛の現在位置を確認した 己の愚かさがよく溶けた アイスソイラテが美味しい午後 しあわせ、と口にすれば ひたいの玉の汗が笑いだす 暑いですねぇ ひところはコートも着ていたのに まだ憂鬱は膝を抱えて…

水草

加速度を上げたレッテルが 水槽の中ではち切れるとき 金魚どもの骨々は報われる 空——まだ数えるには足りない幻滅と 明滅するスマートフォンの広告たちが ゆらゆら行く手を阻むためだけに在り 私の残滓の根本になってしまうとして…