冬の五句
セロリまで筋が朝向く食卓よ 染まりゆく名残りの空に手透かして 思い出を指で閉じ込め日記果つ 白鳥よ旅立つ朝の決意こそ 木枯らしが窓たたく夜のオラトリオ
セロリまで筋が朝向く食卓よ 染まりゆく名残りの空に手透かして 思い出を指で閉じ込め日記果つ 白鳥よ旅立つ朝の決意こそ 木枯らしが窓たたく夜のオラトリオ
私にとってメタセコイアは どこまでも悪辣な他人事で あなたにとってその大樹は 呼吸そのものだったとして 結局微笑むことを選ぶでしょう 危機を報せるジングルベルが あなたには只管 おめでとう おめでとう と聞こえるのは 夜…
私の愚かさは例えるならば 血を吐く前夜の白羊 ミュートしたまま終わった 大演説のごとく虚しい 始まりのない終わりは何処 私に居座るよくない細胞 ついた嘘の数だけ分裂する 下がりきらない半音に ジムノペディを糾弾しても う…
1 最低と口にするきみ凹むぼく天気の話とわかっていても 2 速報に耳を塞いで笑ってる愚鈍と安穏とは比例する 3 ビー玉を夕陽に透かす憂鬱な表情をして土鳩が過ぎる 4 ビー玉を夕陽に透かす憂鬱もかけがえのないあなたの一部 …
勝ち負けは二の次にして運動会 羽ばたきも鈴の音色よ小鳥来る 秋の蝶うつつと夢幻さすらうか 旅人の終着点か天の川 柘榴割る恋にやぶれた昼下がり
飛べばいいんだ 苦しいのならば ここ以外の空へ 飛べばいいんだ あなたは懲りもせず 素数を数え続けては 時折偶数に瞠目して 修正ペンを探し出す 飛べばいいんだ 可笑しいのなら ここ以外の地へ 飛べばいいんだ あなたは相変…
手かざしてひとり佇む望くだり 赤とんぼ子らの頭上に弧描いて 夜学してペン先夢に近づくか 影ひとつ夜風に揺れるすすきの穂 返せない手紙仕舞って秋風よ
1 カーディガン濡らす秋雨改札で二本の傘と待っていたきみ 2 水たまり輪っか浮かんで消えていくのを眺めてるきみを眺める 3 雨のこと悪天候というけれどそれならぼくは悪になりたい 4 ぼくはね、と言いかけたまま沈黙にふたり…
1 満月の下の問いかけくちびるは正答だけを避けて近づく 2 水槽を覗くふたりは寂しさが足し算できないことを知ってる 3 浴槽で金魚がひとりダンスするそう虚しさってこういう感じ 4 過去形にしたい痛みはきみのそれと同じ匂い…
あなたの右目はミラーボールで だからいつもくるくる回って ママのご機嫌を伺っている 新聞のラテ欄には 今日も悲しみばかりが システム化されて掲載されている 「大人になったらぁ」 ミラーボールが逆回転する 「音を立てて倒れ…