今日の短歌 ベランダ

1 ソーダ水こぼしたとたん「運命」を口ずさむきみ指揮するわたし 2 錠剤に向ける視線の邪魔をする きみが見るべきなのは私だ 3 降り立ったホームでカーディガンを脱ぎ風に教わる夏への扉 4 もし栞になれるのならそばにいてと…

今日の短歌 はんぶんこ

1 はんぶんこしたコロッケの少しだけ大きいほうを牽制しあう 2 コンロの火とろとろ見つめ手をつなぐ地球も星のひとつと気づく 3 ラッシュ越えきみ待っている家に着く一等賞はいつもわたしだ 4 ワイシャツがはためく午後にラジ…

今日の短歌 ふたり

1 「ごめんね」を言い出せないで夕飯後渡すつもりのコンビニプリン 2 街あかり きみはあらゆる寂しさに若草色の栞を挟む 3 昼寝するとなりで雨を眺めてる すき の呪文はまた独り言 4 ピリオドを消し去りたくて加速する空も…

春の五句202205

うつろいを告ぐ蝶々の瞬きよ べにをさす誰もがやがて春惜しむ 平和こそ心に架かる初虹よ 春愁にひとりラジオの沈黙か 猫の子の生意気なこと花まるぞ

短歌 甘い雨

1 まぼろしを見た帰り道待つ人のいる意味じんと踏みしめながら 2 窓辺にはなお泣きじゃくる少女わたしがいて四月の空に雨を呼んでる 3 抱きしめてあげたい人がいることが現うつつにも降る涙の理由 4 これ一生消えない傷だ笑う…

短歌 球

1 寂しさのしっぽをそっと撫でてやる怒りに変化させないために 2 さよならは音も立てずにやってくる春だ春です春であるとき 3 我が家ではテレビは地球と同じで壊れかけても気づかれずいる 4 論破して浸る優越感よりもおつりを…

短歌 虚

1 他人ひとのため傘を差し出すひとだけが濡れている街とても虚しい 2 傘さして待っていました穿たれた虚しさやがて光りだすのを 3 書きかけの手紙を破る さらさらと虚しさが遊びにやってくる髪 4 虚しさはAmエーマイナーが…

鳥、温かい食卓

地図からきみを消して 温かい食卓が実現する 断末魔にしては随分と 楽しそうな表情だった パラレルワールドでは きみが私を消すために 夜空から水瓶座を奪い 肩で呼吸し続けている 白い箱に詰め込まれた 安売りされる絶望感が …

短歌 耳

1 右耳にはじめてあけたピアス もう戻れないのが心地よかった 2 耳たぶの存在意義を問いかけて二の句失う缶チューハイよ 3 風の丘 耳にピアスを欠かしたら自分らしくはあれないだろう 4 二番目じゃダメなんですと涙声ゆれる…

短歌 花

1 葉桜にレンズを向ける強がって目を背けてた日々にさよなら 2 燃えさかるつつじに両手突っ込んで「お前らを漢字でも書けるぞ」 3 愛という際限のない重力に負けてしまった路傍のポピー 4 菜の花は目に優しいし美味しいし体操…