盛夏
蝉時雨どこに終止符置くべきか 祈りの日したたる汗のきらめきよ 後悔をしてこそ響く遠雷ぞ 夢さめて氷水飲む喉もとよ 午睡してバナナひとくち平和の世 手土産のメロン切る母の破顔よ
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蝉時雨どこに終止符置くべきか 祈りの日したたる汗のきらめきよ 後悔をしてこそ響く遠雷ぞ 夢さめて氷水飲む喉もとよ 午睡してバナナひとくち平和の世 手土産のメロン切る母の破顔よ
1 風上にきみがいるなら薔薇だけを選びはだしで走って向かう 2 鮮魚たち値引きシールが光ってる閉店間際のいのちの値段 3 無精卵ずらりと並ぶコーナーの裏で売られる生理用品 4 遺言が暗号で記されており遺族が誰も解けないで…
窓際でひとり手遊びレモン水 ラムネこそ恋のはじまり告げる味 サイダーを舐めて慄く三毛猫よ 陽光にゼリーを透かす茶色い目 手つなげばアイスも意地も溶けてゆく
1 四月馬鹿八月もまた騙されて拍手の渦に身を潜ませる 2 どうしたらいいかわからずどうにでもなれと引き金に手をかけた 3 リュックから長ネギがはみ出している彼の日常に差す黒い影 4 特急が見逃してきた過ちをSNSに上げる…
1 終わったら虹をみようと約束をしたのにすでに虹を見た顔 2 唯一の接点だった虹の根を残らず燃やすために微笑む 3 水たまりアドリブでしか暮らせない僕らを嗤うものだけが棲む 4 関係を問いかける声/続柄欄に無関係とだけ書…
1 眠りからさめてまもなく迷子だと気づいたきみの見事なターン 2 風呂上がり湯気たつきみのくちびるがオペラをなぞる夏至の夜更けは 3 きみと手を繋ぐスクランブル 卵は手軽に割れるいのちだ 4 きみの目に映る私が笑っててエ…
1 ホームドアのない通過駅で固める決意ありデートに遅れるひとが増える 2 ホームドアのない駅に街宣車突っ込むみんなのことを守るためだと 3 猿から進化したにせよずいぶんと生きづらい形を選んだものだ 4 神さまがおつくりに…
1 かさぶたを剥がし呼吸を止めるときにだけ生まれ変わりを信じる 2 首を振る扇風機のごと拒否権があるのかそうかもう泣きそうだ 3 角砂糖溶けてゆくのを待っているそのあいだにも燃え尽きる星 4 あめ玉を転がす舌に憧れた夏の…
1 雨に添う少女の影を庇うため紫陽花たちが深呼吸する 2 人知れず閉じた心を携えてただ梅雨明けを恐れて暮らす 3 怪物に食い破られたワンピース雨がやんでも脱げないでいる 4 雨上がり叫んでいいと許可されて羽虫を潰すしかで…