短歌 目
1 水槽の鯵と目が合う天国の入口にいると自覚している 2 夜空には無数の目玉もうやめて気が済んだって破裂しないで 3 ランドルト環のぱっくりしてるとこに指を入れたらぶにゅっとしてる 4 眼球がごろごろ惑う手を取って踊り明…
1 水槽の鯵と目が合う天国の入口にいると自覚している 2 夜空には無数の目玉もうやめて気が済んだって破裂しないで 3 ランドルト環のぱっくりしてるとこに指を入れたらぶにゅっとしてる 4 眼球がごろごろ惑う手を取って踊り明…
1 離れれば離れるほどに輝いてみえる故郷の最寄りのスタバ 2 頑張れは命令なんかではなくて代替不可な祈りの言葉 3 この爪も化石になれば誰かから求められると信じて舐める 4 触角も羽もしっぽも失ってそれを進化と呼びたがる…
いわし雲ひとそれぞれに旅立ちよ 秋桜よ逆風にこそ凛とあれ 破顔する母のまぶたに月宿る 赤とんぼ昔語りに寄り添うか 歳月よ山粧うか老いてこそ
1 UFOがいない証明ができずに実りの秋だ誰を責めよう 2 天狗からもらったサイン本として神保町の東に隠す 3 星の降る街に暮らしてふたりきり 部屋は狭いほうがいいと笑う 4 宇宙にも終わりがあると信じたい終わるとしたら…
紅葉よ燃えて散るとは生き様ぞ 傘の帆に連なる露のきらめきよ 勇ましさ秋刀魚がどんとある夕餉 芒まで手を振り返す帰り道 三日月よふくよかな闇抱きしめて
1 ワイパーが動き出したら息を止めせめて時間を忘れさせてよ 2 シネマでは結ばれていたあのふたりブレーキペダル強く踏み込む 3 はじめからわかっていたよ花束は作り笑いを誤魔化すためと 4 味のないガムを噛むとき未練とはや…
からっぽの籠に手を延べ小鳥発つ 秋の雲進めば影も道となる 月を抱く人よ熱まで閉じ込めて ありのまま明日を導く小鳥こそ 秋の雲うつろうすべて頬に受け
1 エラ呼吸できないぼくら輝きは確かにあの日失くしたうろこ 2 うろこ雲見上げて歩く帰り道 神さまがまた居留守を使う 3 そばにいてなんて言えない留守電に悲鳴を入れたなんて言えない 4 言の葉が紅葉したら逢いにゆくひとと…
1 ふっくらと焼き上がったね僕のためだけに死んでくれた秋刀魚ラブ 2 それぞれの自宅に小さな火葬場がグリルという名で存在をする 3 おいアヒルお前の兄は目の前の丸焼きとして立派であるぞ 4 カブトムシ素手でさわれるみたい…
1 苦しくて金木犀を手折るきみ逃れられずにそこかしこ秋 2 冷凍庫の奥に隠した金魚たち人を恨むか夏を騙るか 3 満月は欠けてゆくのみ きみはまだ白紙の手紙燃やせずにいる 4 二つめの月は青色回転灯まちの上気を牽制している…