恋する星座

1 偶然が必然になる瞬間は辞書には「恋」と記されている 2 また会える約束だけがオリオンのとなりで今も瞬いている 3 綺麗事という必要悪があり今日もなんとか生きてゆけます 4 オリオンのいちばん右で光る子はあたしの好きな…

短歌 晩秋のカニ

1 コンビニで肉まんを買ういつもの儀式のように冬が近づく 2 道端に冷えたコインが落ちていて寂しくなっていいのだと知る 3 1プラス1が2になるとき0はレゾンデートルを探しはじめる 4 くちびるをくっと上げたら虚しさに勝…

ポインセチア

迷妄をさらけ出した空は 雲をさらって落暉を隠す 真冬に凍える部屋の隅で 漸くまぶたを開いたのに 光を求め扉を開けた途端 冷たく降り注いだ視線が 私の脳天をずんと直撃し 紅い徒花を咲かせるのだ 私の思考はやがて白濁し 流転…

短歌 のど飴

1 のど飴をくれた人から幸せになれる仕組みを早く作って 2 口当たりのいい言葉を多用する優しい人を見たことがない 3 自己犠牲という言葉を知らずとも「みんな違ってみんな」がそれだ 4 誰かさんの機嫌のために潰されるこころ…

短歌 イルミネーション

1 まんなかにふたりの指が交差して寂しさ埋めるイルミネーション 2 街角のイルミネーションまた少し息が苦しい綺麗なだけで 3 明滅のイルミネーションに隠れて笑ったきみの出すSOS 4 広告によく知らない有名人 イルミネー…

神無月

さよならを見送るだけか秋の風 林檎食む頬に夕陽のさしてこそ 稲妻と落ちる初恋閃いて 目をつむり亡き友と酌む紅葉酒 すすきまで手をふり返すひとりの夜 快速よ待ち人の住む街も秋 オルゴール遠い記憶に照る紅葉 赤とんぼ追い越し…

ラドリオ

  息を止めないと 泳げない僕らだから 呼吸とは足枷のことだ 大空を飛んでみたいと 翼ばかり欲しがる僕らは 神さまのただの誤算だ 息を止めないと 苦しくなってしまう僕らの 息苦しさはもはや喜劇だ(笑え) 息を止…

短歌 霜月

1 心にも花が咲くとはいうけれど根を張る場所を誰も知らない 2 踏切の赤いランプが明滅に溺れるたびに仔猫がよぎる 3 桜などモブでしかない霜月の街路にひとり佇む天使 4 そのままのあなたでいいと言われてもトゲが刺さったま…

ぴかり

沈黙はあまりにも美しすぎて 怖くなるから破ってしまった 秘すれば咲く花は散りました 夜空に煌めくぴかりお星さま 今年も出逢えたオリオン座も 無常以上に官能的な音を立て 彼方へ沈んでいくのでしょう お願い置いてかないで ま…

短歌 きみのとなり

1 行き先を知らないバスに乗るようなきみのとなりで過ごす日常 2 いつかまたきみが壊れてしまったらリビングの薔薇を新しくする 3 美学には程遠い場所にある生き様をどうか笑っていつもみたいに 4 駅前のネオンがちかり瞬いて…