短歌 カナ

1 うまそうにマック頬張る顔を見てどこに惚れたか検索をする 2 今買うと百万円のこのツボがなんと三日で壊れて消える 3 言い訳を考えている顔をしていること割とバレてますけど 4 分度器を売ってるコンビニを探して月の裏側ま…

短歌 デート

1 ためいきのその先にあるほんとうを知るために今日ペディキュアをぬる 2 新しいスカートにキャミ合わせたら気づいてくれるなどファンタジー 3 耳たぶが厚いんだねと触れられて反則技を見逃すピアス 4 はちみつがなぜ甘いかを…

目を閉じてそれでも灯る蛍火よ 子のいのち託した蛍去ってゆく 雨傘の柄に重なったふたりの手 紫陽花にスマホを向ける老いた父 結ばれず自由を知った夏の蝶 クーラーのリモコン権が火種とは よく冷えた瓶に頬寄せ笑う子よ 扇風機若…

短歌 箱

1 矛盾しているってきみは泣くけれど色恋沙汰に論理は不要 2 うらおもてが許されるのは人生が野球にとても似ているからさ 3 リビングでムーンウォークの練習をしているきみ、たぶん捕まる 4 この部屋も宇宙の歴史の一ページと…

ケーキ

ホールケーキを等分にするためだけに アリスがナイフを振るう 縦に切って 横に切って 斜めに切って 反対側も斜めに切って ケーキは八等分になったけれど 春、夏、秋、冬、雨、雪、雷、風、アリス テーブルには九名座っていたから…

短歌 恋人

1 と指チョコレート越しにあわせて買ったばかりのシーツに沈む 2 耳たぶに触れるときまだためらいがあるからきみをまた好きになる 3 屈服はきみにだけする もし明日世界が終わると脅されたって 4 きみが好きな味のポテチは売…

1 真っ黒な雲を呼んだのきみですか 高確率で僕は打たれる  2 紫陽花をひとつ手折って差し出せどそれは死体と言い捨てるきみ  3 鉛筆をナイフで削る音がするごめんなさいを言いそびれてる  4…

1 あなたから借りた詩集を開けずにうずくまってる金曜の午後 2 蝶々の不規則な軌道を追ううちやがてあなたにぶつかる視線 3 陽光のあたる窓辺でふたりして黙って揺れる雷を待つ 4 「深呼吸したほうがいい顔色があまりよくない…

短歌 家電

1 扇風機に「あー」と向きあうきみをそろそろ火星人が迎えにくる 2 ペアリングできない機器ももしかして孤独なんかを知るのだろうか 3 前髪の分け目を変えた朝なのにきみは生きるのが下手なままか 4 花柄と水玉が好きだといえ…

Good-by chalon(dreaming forever)

街を歩いていると、ああ私ってほんとうに独りなんだなと思えるから好き。万が一もう一人、私が向こうの道からのたのた歩いてきてもちゃんと無視できるくらいには強くなりました。失うべき音が一つもないこの街の唯一の汚点が私。とても心…