短歌 イルミネーション

1 まんなかにふたりの指が交差して寂しさ埋めるイルミネーション 2 街角のイルミネーションまた少し息が苦しい綺麗なだけで 3 明滅のイルミネーションに隠れて笑ったきみの出すSOS 4 広告によく知らない有名人 イルミネー…

ラドリオ

  息を止めないと 泳げない僕らだから 呼吸とは足枷のことだ 大空を飛んでみたいと 翼ばかり欲しがる僕らは 神さまのただの誤算だ 息を止めないと 苦しくなってしまう僕らの 息苦しさはもはや喜劇だ(笑え) 息を止…

ぴかり

沈黙はあまりにも美しすぎて 怖くなるから破ってしまった 秘すれば咲く花は散りました 夜空に煌めくぴかりお星さま 今年も出逢えたオリオン座も 無常以上に官能的な音を立て 彼方へ沈んでいくのでしょう お願い置いてかないで ま…

短歌 冬202011

1 まだ指で疵を数えている人に初冬の風は容赦なく吹く 2 吐く息が白くなったら人々は大事な人を想うのだろう 3 あんまんを分けあう人がいたとして基本的には一人で食べる 4 泣くこともできずに心凍らせたきみのとなりにストー…

都市を詠む

白い息はずませ進む交差点 クリスマス山手線で結んだ手 初雪を同じビルから見るひとよ ビル群はイルミネーションみなひとり 枯木立ひとりで歩く渋谷駅 新宿よ冬の落暉に細める目 肉まんであたたまるのが都市の冬

短歌 秋

1 流行に乗り香水を買ったけど自分のせいにされたくはない 2 散り終えたあとの枝にもブランコの紐が括られ少女が遊ぶ 3 あたためたミルクに張った膜ひとつ曖昧なまま破る真夜中 4 金魚鉢ひとり寂しくないのかと問うてもゆらら…

短歌 文房具

1 叫んだら届くだなんて嘘でしょうボールペンさえ消せる時代だ 2 削るほど鋭利になってく鉛筆は心模様の代弁をする 3 落書きを消すためだけに使用する修正液が上塗ったもの 4 人を刺すことさえできる道具にてきみに手紙をした…

短歌 風

1 木枯らしは過日のきみの歌声を遠く遠くへ連れ去ってゆく 2 スカートをめくる北風もしかして私は恋をしたんでしょうか 3 傾いて置かれたままの写真立てのなかのきみは風を知らない 4 落ち葉舞う朝を迎えて別れだけ必然である…

短歌 カクテル

1 背伸びしてキールを飲んだ5分後にくたっと肩に寄りかかるきみ 2 新しいリップを買ったばかりでも別れ話に関係はない 3 ふられた日ブルームーンを飲み干して海を見にいく予定を立てる 4 リクエストソングにとことん励まされ…

短歌 恋する星座

1 偶然が必然になる瞬間は辞書には「恋」と記されている 2 また会える約束だけがオリオンのとなりで今も瞬いている 3 綺麗事という必要悪があり今日もなんとか生きてゆけます 4 オリオンのいちばん右で光る子はあたしの好きな…