短歌 朝

1 モーニングコールで起きないきみのため時計仕掛けのタライを吊るす 2 夢のなかで誰となにしていたのかと8年経っても嫉妬している 3 目覚ましににナンバーガールかけるきみの朝の不機嫌の理由はそれ 4 目玉焼きのかたさの好…

短歌 隣

1 懐メロを思い出として聴くきみの隣は歴史の勉強になる 2 背くらべて爪先立ちしても足りないその差が気持ちの距離だったなら 3 はんぶんこと呼べたならよかったな真っ二つにされ哀れなケーキ 4 真剣にタルト・タタンを食むき…

短歌 旅

1 誰一人として噛み合うことのない歯車として朽ちてゆくのか 2 耳の中に海があったらひねもすに波音とだけお喋りできる 3 神さまはどこへいったか僕だけが知っていること秘密にしてね 4 疑心暗鬼を討ち倒したって嘘をつくまた…

短歌 宇宙

1 UFOを見たんだなんていうけれど土産がもなかなんてあんまり 2 金星が逆回転をしはじめた そんなことより外は土砂降り 3 もういない星の光が目に届く 隣に立つきみの袖を引っぱる 4 水たまり 月が半分だけ映る そうね…

短歌 兎

1 もしもまた恋に落ちたら一番にハシゴ担いで来てくれますか 2 抜け殻を集めてまわる趣味のひと午後5時ごろのニュースになってた 3 眠らない眠りたくない眠れない いずれにしてもあなたのせいだ 4 水蒸気みたいに未練が消え…

光の粒

1 私は昔小さな羽虫で あなたのベッドの裏についてた のたうちまわるあなたのため そっそそっそとへばりついてた 不機嫌なあなたの指で 潰されてしまったけれど 2 私は昔生意気なチャトラ猫で あなたの眠れない夜によく あな…

短歌 足し算

1 三つ編みを解いた後のうねうねで女神の気分 きみをさきたい 2 ライバルにオールドファッションをとられて不機嫌なのも了解しました 3 僕は雨降りの日にだけ現れて君の背中を潤すかもめ 4 難しい言葉を知っているんだねハレ…

ざん、

もし明日晴れたとしても いつかの雨を私は忘れない 確かに明けない夜はないけれど 手が小さくてセーハがとれず 容易く絶望した夜のことも 日記には残っているから 正しい紅茶の淹れかたと マイナーコードしか覚えられず 下手なギ…

春202004

小包をほどく笑顔に春が来る 書きかけの恋文にひとひらの花 思い出の隅に映えるよチューリップ 少年の道しるべたれ春北斗 帰りみち綿毛を吹けば歌になる 日めくりとともに顔出す葉桜よ シクラメン三連符まで連れてくる 四月馬鹿い…

短歌 映画

1 ここまではフィクションですがここからをフィクションにするかはあなた次第 2 本当に白馬で来られたら困る甲州街道が渋滞するから 3 めでたしのその後が知りたくてパンフの裏表紙を陽光に透かす 4 シジミチョウ捕まえ瓶に詰…