短歌 煌めきの赤

1 満たされるつもりなどない 愛情に底があるとは思えないから 2 私たち重ねた日々が鮮やかに広がってゆく影が愛しい 3 ゆく季節に柔らかなサヨナラを真白いベッドの上で告げるの 4 銀河系の隅っこでまだ泣いてるの 胸を裂く…

短歌 正しさ

1 理解してなんて言わない私たち輪廻の外で幸せだから 2 滲んでる境界線を引き直しもう一度だけ正気を保つ 3 終焉に向かう世界を泣き喚く貴方のせいにしてしまえたら 4 最後尾からの方が早い 閉じてゆく日を数えるならば 5…

短歌 晩冬

1 芽吹いたら底を知らない恋心 晩冬の空に毅然とあれ 2 「ありがとう」と「愛してる」の言の葉はくすぐったさがとても似ている 3 灰色の冬を脱ぎ捨て街に出よ 小さな春を捕まえにゆけ 4 届かないことは同時に尊さを伝えるこ…

短歌 誕生日

1 倦怠期をケンタッキーと間違えて今日も我が家は平和なのです 2 おめでとうが今更照れて言えなくて口を尖らせつぶやく「老けた?」 3 あなたからもらったピアスをしています 早く髪に触れそれに気づいて 4 サプライズがなく…

短歌 ヒストリー

好きな色も知らない人にプレゼント 有馬記念より緊張する 本当にいいんですねと念押され急にためらう愛の告白 流行らないタバコなんかでごまかして微笑めるのは今のうちです 心にはしっかり棲みついているのに歩幅を知るとイライラし…

短歌 不思議

1 突然に私の頬に雨が降る 過日に捨てた夢の破片だ 2 セイハロー、天国に向けセイハロー、そろそろ着いた頃だと思う 3 優しさはこころの果実と心得て熟れたらそっと左手でもぐ 4 北風に怯えた日々もあったけどジャズのリズム…

短歌 ココア

1 窓際で眠るあなたに降り注ぐ柔い西陽に僕はなりたい 2 思い出がこれ以上美化されぬよう右のこめかみを強く押した 3 美しい季節になれと微笑んで秋を屠った君は変態 4 私よりゲームに夢中な君のこと攻略をするゲームに夢中 …

短歌 アドレッセンス

1 頭からトマトスープに突っ込んで溶けたあなたの味が好みよ 2 あやとりの得意な人は手をあげて そこに神経を通しますね 3 危険だと早く逃げてと叫ぶ君のシルエットがもう笑ってる 4 なにもかも芽吹き始めたせいにして思う存…

短歌 卒業

1 へたくそな口笛だって構わない 今はひたすら声がききたい 2 桜色の袴が似合う人でした ほんとに淡く散ってしまった 3 嫌いとは愛の同義語 三月の空になびかぬ切りすぎた髪 4 アイシャドウなんてつけない 嘘のない瞳で君…

短歌 やわはだ

1 さよならを置き去りにした二人して永遠求めツツジを啜る 2 幼な子の黒目に問うてみるがいい ちゃんねるを見る背中はどうか 3 やわ肌についた傷ごとよろしくね あなたの爪が弾く思い出 4 省みることのできない阿呆烏 正義…