短歌 灰

1 我もまた少女だったというひとの思い出に載る灰のアルバム 2 悲しいと爪を噛む癖を叱ってくれたあなたの影を踏んでた 3 その人が絶対であり神であり愚者であったと気づくのが恋 4 大切を大切にして大切に抱えていたらグレー…

短歌 クレヨン

1 偶然だ 血が赤いのもぬるいのもなかなか止まることがないのも 2 ブラウスのピンクのしみは確実に君に恋した盛夏の残滓 3 オレンジを食べた! 朝から君のこと早く壊してみたいと願う 4 たまさかに君の生存を知ったよ 鳥よ…

天使の遺言

笑えと言われたから笑ったの私いい子ですから 死ねと言われたから攣ったの私いい子ですから  それで、いつ愛してもらえますか  そんなことより頭が痛い 頭痛が痛いって誤用かな 本当の本当に誤用かしら 正しさの反対側を見たい …

短歌 カット

1 わたしもう自分からログアウトして言葉の嘘を撃ち抜きたいの  2 笑われてちょうどよかった過日の碑 解すことのない世界を嗅いだ  3 シンメトリだけが正義の造形か 愛の急所は歪んでいるぞ  4 整った車内アナウンスばか…

短歌 晩夏

1 ひまわりが怖いとないたセミたちの悲鳴を耳にぶらさげる午後 2 結局は影になるのだ 星求め自分探しの旅に出たひと 3 苦しさを分けてあげます あなただけ笑ってるのはおかしなことだ 4 処世術 啓発本に生きるコツ ぜんぶ…

短歌 占い

1 占いを信じるわりに私には現実的なことを言うのね 2 水瓶座と射手座の相性がいいことは僕たちがもう証明してる 3 唇をくっつけたそれは事実上キスと判定していいですか 4 この胸にドラムンベースが棲みついた 重たく深く鼓…

短歌 ジュブナイル

1 本当にごめんなさいという君の心の声をよく確かめて 2 さよならは無駄がないから悲しくてWordの余白を拡げてみた 3 かくれんぼ 鬼ごっこ ままごと全部黒で潰した理由も知らず 4 手と手と手 真っ逆さまに落ちてゆく …

短歌 煌めきの赤

1 満たされるつもりなどない 愛情に底があるとは思えないから 2 私たち重ねた日々が鮮やかに広がってゆく影が愛しい 3 ゆく季節に柔らかなサヨナラを真白いベッドの上で告げるの 4 銀河系の隅っこでまだ泣いてるの 胸を裂く…

短歌 誕生日

1 倦怠期をケンタッキーと間違えて今日も我が家は平和なのです 2 おめでとうが今更照れて言えなくて口を尖らせつぶやく「老けた?」 3 あなたからもらったピアスをしています 早く髪に触れそれに気づいて 4 サプライズがなく…

短歌 ヒストリー

好きな色も知らない人にプレゼント 有馬記念より緊張する 本当にいいんですねと念押され急にためらう愛の告白 流行らないタバコなんかでごまかして微笑めるのは今のうちです 心にはしっかり棲みついているのに歩幅を知るとイライラし…