【断片】 <思いつき>

誰にとっても了解可能な言葉に呪詛は宿らない だからあなたの唇はいつも乾いていたのかしら /いくら舌舐めずりしたところで 満たされることなどなかったね/ だから私は(as 虚しい抵抗)「これ」を並べる ランパトカナル ラン…

短歌 春待ち

1 嘘つきは美しい花になるはず四月ごろには桜が咲くし 2 萌芽とはつまり悪意の目覚めだという仮説なら否定しておく 3 缶コーヒー片手に君を待っていた路地の氷がみたび張るまで 4 クリスマスソングが世界を急かすから自転速度…

かけっこ

2019って素数だと思っていたから、ものすごく怖かったの。そこへ673で割れるって、だからあいつは素数じゃないって、教えてくれたのは通りすがりの三毛猫でした。語尾に「にゃあ」とか附いているのかと思ったら、それは流暢な日本…

レインツリー

あなたはレインツリー 両手を広げて分裂する あなたはレインツリー 地球を抱きしめて干る なにもかも アイシテル のせいかな テールランプの明滅に 揺らぐ自我を投影して 脳内ではオルゴールが 逆再生でカノンを奏で 苦しいっ…

深海魚

宇宙が広いだとか 地球が丸いだとか そんなこと知らない 深海魚は 空の色を知らない そよ風を知らない 満月がほころんでも なんにも見えないから 目覚めを忘れてる 太陽がゲラゲラ笑っても なんにも聞こえないから 安穏を失く…

午前3時のスープ

優しいあなたの 心はいつも血まみれ 生きているんだね。 その匂い、私は好きよ 優しいあなたの 血まみれの心に触れ 生きていくんだね。 この味ごと、大好きよ 愛という言葉の正しい使い方を知らないから、とりあえず刻んで干して…

出口

どこをどう見ても 出口しかないんだ まだ出たくはない 初めてピアスを開けた日の 鈍い痛みは耳朶が覚えてる 優しくなれない私に代わり 飾りを揺らして泣いている カーテンだらけの部屋に夜が 星を連れてやってきたけれど 誰も光…

ギフト

あたかもそれが正当であったかのように貴方は傷だらけで笑う。トレモロを弾く指先に噛みつきたい私の破瓜、それを浅ましいと言い捨てたのと同じ目で。 あたかもそれが正答であるかのように貴方はかさぶたを磨く。いつ剥がれてもいいよう…

新宿

みんなに嫌われているのが 新宿という場所だとしたら それ私と一緒だ  みんな通り過ぎてくだけで 汚すだけ汚して去ってゆく それ私と一緒だ  街を彩るネオンは苦手だけれど 少しだけ前を向いてくれないか 疲れた顔がよく似てい…

紅涙確率

雨はまだ降っていない 街の話だけれど 木枯らしのエチュードで 枯葉たちが踊っている  雨はまだ降ってくれない 心の話だけれど 涙を流せなくなってから 道化がずっと笑ってる  心を開けと人は言うけれども 開いたら開いたで傷…