謝辞

私が誰のことも笑わないのは 心優しいわけではなくて 誰かをあざ笑うときの自分の醜さを 思い知っているから きれいな言葉や 正しい行動ばかり求めていたら 臆病な自分だけが 水底に残ってしまいました 嘘つき。 嘘つき。 みん…

白と黒

僕には夢がある この口からもうこれ以上 クロアゲハが溢れませんように 家に帰ってきた君に 「おかえり」を言えるように この口からもう二度と クロアゲハが溢れませんように 私には願いがある あなたがもうそれ以上 白い妄想に…

天使の遺言

笑えと言われたから笑ったの私いい子ですから 死ねと言われたから攣ったの私いい子ですから  それで、いつ愛してもらえますか  そんなことより頭が痛い 頭痛が痛いって誤用かな 本当の本当に誤用かしら 正しさの反対側を見たい …

僕のためのランパトカナル

今日はランパトカナルについて学びましょう。あなたのためであり、僕のためであり、みんなのためであり、誰もが地球にすべて帰するための貴重な手段の一つですから。 (英)lampatcanal (日)ランパトカナル (仏)la&…

角砂糖

どうしても隠しきれない本性を、隠さなくてもいいんだよって、君が目の前で笑っている。許されたいのは、誰も一緒なんだね。 抱きしめたら心の潰れる音がした。こときれゆく君は僕の腕の中で歌を歌う。ずっと聴きたかった子守唄のはずな…

キラキラ

花壇に仰々しく設えられた花を見て、命がねじ曲げられているのを目の当たりにし、キラキラした街から取り残されたことを改めて思い知る。 人々が口々におめでとうというのを、耳を塞いでやり過ごしていた、夜がもうつらい。耳たぶに冷た…

一等星

うまく叫べなくて うまくないなって 月の上みたいって 指先ばかり雄弁で 招かれた交歓会で たくさんの屍肉を たくさんの人々が 嬉しそうに食んで うまく叫べなくて 刺々しい気持ちに 支配されてしまう 美しいせいだろう (怒…

愛のみぞおち、青の記憶

君からの手紙を全部焼きつくし残った灰を愛と名付ける みんなが希求している愛とは、大抵が残滓なのだと思う。本来なら欲求のみで生きられた僕らが愛を求めるようになって、この星はおかしくなった。思い出は青い記憶となり、砂塵のごと…

スープ

あなたの指先はいつもかすかに震えている 寒さのせいじゃないね 病気のせいでもないね いろいろが溶けたあたたかなスープのせい よくばりな私をどうか叱ってください 見守るばかりが優しさではないように いつか枯れるから花を愛せ…

バイバイ、wi-fi

バスターミナルで誰かを待つふりをして 老婆が巧妙な罠を張る 家路を急ぐ人々が一人残らず 孤独に苛まれますようにと 願いを込めた売り物のマッチ バスターミナルは前しか見えない人だけ 老婆が何度も言問する 家路を急ぐ人々に一…