短歌 知らなくていいことなんて大抵は知らないほうがいいことだしな
1 この街は猫が人より賢いと金木犀の梢のみ知る 2 虫の音にきみの口笛が重なる夜ならずっと明けなくていい 3 蹴り飛ばすためのムーブで後方の金木犀と目が合ったのに 4 そこに在る沈黙、余白、行間にむりやり意味を付与すべか…
1 この街は猫が人より賢いと金木犀の梢のみ知る 2 虫の音にきみの口笛が重なる夜ならずっと明けなくていい 3 蹴り飛ばすためのムーブで後方の金木犀と目が合ったのに 4 そこに在る沈黙、余白、行間にむりやり意味を付与すべか…
1 波音で目を覚ましたときみの朝いつの海かはきかないでおく 2 緩やかな上り坂だと気がついて同時に走りだしたあの浜 3 黒鍵を人差し指で撫でつけて雨が降るから十月になる 4 どうしても数が力と思いたい者の頬にも風は優しく…
1 ひぐらしを聞いていないとこぼしたら挙動を止めてきみは目を剥く 2 ミラー越しきみは都合のいい声をかき消したくて歌いはじめた 3 枯れるのもやがて地球に還るためあの向日葵を迎えに行こう 4 曼珠沙華きみには愛と執着が等…
1 ほんとうはきちんと怒いかりたかったと気づけただけでわたしはえらい 2 新宿で解散のあと数人で行ったカラオケこそ忘れじの 3 いつもなら降りない駅にきみがいたいつもみたいなアサシンの目で 4 湖に欠けゆく月を見つけても…
1 満月をさらに満たそうとしてくるそれを愛だと思うほかなく 2 オジギソウ葉っぱを全部ダラララと弾いた奴と話がしたい 3 タルトから逃げたベリーを目で追えばきみの過去などどうでもよくて 4 オムレツがとてもきれいにできた…
1 この蜘蛛を仲間に入れてやりたくて六本脚にしてやりました 2 うまくやるだけじゃ苦しくなるだろう無傷自体は欠陥だから 3 千羽鶴まずは一羽を折りましてあとはコピペで済む時代です 4 使用後の手持ち花火に頬を寄せありがと…
1 メッセージボトルを拾うどこからが過ちだったなんて知らない 2 歩けども地を這う蟻の賢しさに敵わないこのくたびれた肝きも 3 向日葵が枯れればすぐに刈り取ってその断面を凝視するきみ 4 輝きを手にしたいとき宝石じゃなく…
1 揺れていたのは向日葵ときみの影 ソノタオオゼイでいたかった 2 光れないからこそ光が当たるああ短所は実は愛せる余地だ 3 光さす場所を求める僕ら肺呼吸とか自意識とかを手放せないで 4 この蟹は美味いんだけど横にしか歩…
5 このガムの味が消えたら帰るって決めていたのに消えないミント 6 届かないものほどきれいに見えるのは細部をろくに知らないからだ 7 ビー玉に逆さの海を閉じ込めるため息さえも涼風にして 8 理不尽が初期設定の現実を笑い飛…
1 殴っても謝らなくて済むように払ったものは犠牲かカネか 2 テンプレを剥がす知性を身につけよ9月1日迎え討つため 3 もぎたてを齧る以上の贅沢は必要がない夏のまんなか 4 知ることとわかることとは別物だ 夜風がすでに秋…