短歌 冬空
1 底冷えの街に暮らして明日もまた同じ夕陽を待ちわびている 2 街はもうクリスマスなどは置き去りそんなものさと笑うみなさん 3 から回る歯車抱いて星空を見上げ損ねる日々を重ねる 4 ほらここが孤独の巣だと指をさす左の胸の…
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1 底冷えの街に暮らして明日もまた同じ夕陽を待ちわびている 2 街はもうクリスマスなどは置き去りそんなものさと笑うみなさん 3 から回る歯車抱いて星空を見上げ損ねる日々を重ねる 4 ほらここが孤独の巣だと指をさす左の胸の…
1 生真面目は褒め言葉ではありません そろそろ上着を脱いだならどう 2 目に映るすべて愛してみたかった かつてあなたがそうしたように 3 嘘をつくとき両の目がよるという癖に気づいた私はえらい 4 目薬を五階からさすチャレ…
1 永遠という幻は芳しく多くの人を惑わす魔物 2 ひとはひと わたしはわたし それだけのことを解すのにきのこが生えた 3 横顔を射抜く真冬の夕焼けがずっとあなたを責め続けてる 4 もう今日は帰らないでね いつもよりたくさ…
1 だれひとり僕を知らない街にいて「こどく」の意味を僕は知らない 2 輝けと命令するな僕はまだ正しい呼吸もわからないのに 3 夢を見て初めて気づくこともある 今日も明日も燃えるゴミの日 4 カラカラと軋み続ける僕の骨 ど…
1 輝きを強制される僕たちは合言葉まで上書きされる 2 苦しいと笑ってしまう癖なのに礼賛されて真似までされて 3 風を受け微笑んだこと馬鹿にされいつの間にやら馬鹿にする側 4 真剣な悩みを友に打ち明けた 友であったと誤認…
1 醜さの喩えに使うためだけに私に合鍵なんてくれたの 2 私たち一緒の部屋で呼吸することさえ今や疑っている 3 なにもかもどうでもいいと言うのならその指輪から外してみてよ 4 骨として去っていく者 「思い出」と「平等」の…
1 ゆりかごは遠くにあって手を伸ばす理由もなくて夏が去ってく 2 セミたちの声にまぎれてから笑う そんなあなたがやっぱり好きだ 3 木陰から顔を突き出すバス停よ 優しい街に連れてってくれ 4 光から逃れるために明日など何…
1 夢を見て夢が破れて夢のなか夢にまでみた夢の世界よ 2 夏空を誰も見上げず笑ってる ノートの隅が日のあたる場所 3 あの夜を小瓶に詰めて朝が来ることを嫌がるまぶたに塗った 4 鐘の音が響いていると君は泣く カーテンだけ…
1 新しいファミマが街に増えるたび居場所をひとつなくすのは誰 2 容疑者と呼ばれた夏も青空で入道雲が威張っていたな 3 斎場の灯りがついた夜にだけ許しあうこと許してほしい 4 ビブラートできない鳥は殺してもいいんだよって…
1 間の抜けた顔で剥き出しの惰性をかじる君のまつげに浮く汗 2 「星座って孤独を繋げてできてるの」君の仮説を葬り去ろう 3 舌の根も乾かぬうちに発車ベルが聞こえたから旅に出ましょう 4 シャボン玉は壊れるためにあるという…