短歌 未来

1 さかさまの夕焼けを見た帰り道 たぶん僕らは無敵だったね 2 小さな手 握り返したぬくもりを忘れてしまう仕組みが憎い 3 手放した記憶たちがまた居座って青春のやり直しをさせる 4 退屈な質問をしてすみません 私のどこが…

短歌 ホットココア

1 繰り返しお伝えします この僕は君の前では嘘がつけない 2 寂しいと呟くことが寂しいとホットココアに溶けてく言葉 3 ため息も白くなってく霜月のドアの向こうに君が待ってる 4 いつのまに育った気持ちだったのかわからない…

短歌 贈り物

1 思い出が美しいなんて決めないで 今から汚すつもりでいるの 2 最近の流行をよく知らなくて「今どき?」なんて言われ嬉しい 3 街路樹にコートを掛けてあげたいと言ったあなたにくるまれたいよ 4 初めての夜がはらりと遠ざか…

短歌 ほっと

1 いい加減私の気持ちに気付いて そして隣で天気を当てて 2 未来ならフリーハンドに描くから軌道に貴方を必ずのせて 3 暗闇の中にいるからこそ光る君の絶望は宝物だ 4 目を閉じてひとりっきりのフリしてもまぶたの裏であなた…

短歌 冬のはじまり

1 寒いより寂しいが勝っているとまだ貴方には伝えられない 2 強がりは積もれど雪にならなくて遠くで白が手を振っている 3 背中から羽が生えても安心だ 君が残らず毟ってくれる 4 いま君が隣で風邪をひいていることが実は嬉し…

短歌 吐息

1 二番目じゃだめなんですと涙声 掴んだ袖に嵐の予感 2 告白がまるでこれでは告発だ 誰が君の心を踏んだ 3 時ぐすりが効いてきたから大丈夫 私あなたと眠っていたい 4 ただ一人を信じる勇気が生まれて師走の空も笑ってくれ…

今日の短歌 白鷺

1 許されていたと気づいてあの頃の自分にかける「大丈夫だよ」 2 嫌なことばかり目につく金曜は好きなケーキを買うべきである 3 「死にたい」と「死ぬ」の間に横たわる遥かな川を白鷺が征く 4 道端に落ちたザクロを踏んづけた…