短歌 手

1 言い訳を並べるだけの「すみません」手にかけたくはなかったけれど 2 鉛筆をナイフで削る指先はおそらく誰も傷をつけない 3 レシピには載らないものを手に入れて料理サイトでエラーになった 4 幼い日ごつごつしてた父の手を…

短歌 月

1 きみはまた私がすきだなどという そんなことより月がきれいだ 2 ピアノよりきれいな声で泣けるなら今すぐここで泣かせてあげる 3 春を待つきみのとなりで雪を知る たぶん私の早とちりかな 4 整った食器棚には嘘がある 短…

短歌 ひみつ

1 君の横空いているなら1名で今すぐ予約させてください 2 言い訳を探してるうち春が来て夏去り秋に枯れ果てるひと 3 折る指も足りなくなって心臓を差し出しました きみに逢いたい 4 髪の毛も爪も裸もきみのため気を衒わずに…

短歌 願いごと

1 首を吊るための道具と知っていてあなたに贈る手編みのマフラー 2 飴玉を転がす舌先を眺める 赤色3号はたぶん私 3 手を繋ぎおんなじ月を見上げても一つになれない 寒さのせいだ 4 道端に落ち葉に隠れ朽ちていた小鳥の死骸…

短歌 挨拶

1 死にたさは生きたさですと教科書に載っていたから絶対に嘘 2 階段が天国にまで続いててああよかったなって一歩踏み出す 3 目の前を通過列車が過ぎてってあたしのこころだけ轢いてった 4 帰り道赤信号だけを選んで歩いたけれ…

短歌 優しさ

1 ふりこって誰がどうあれあるがままふれているから羨ましいな 2 心臓の奥の奥より奥のほう 君が粗末に捨てたまごころ 3 優しさは流行らないから味のないガムを選んで渋谷を歩く 4 ふたりして爪を噛むからふたりしてひとりぼ…

短歌 放置

1 断言が断罪になるというのなら早く私を馬鹿と貶して 2 この駅に快速列車が止まらないのも寂しさも私のせいだ 3 鈴虫に唆されて僕はいま誰も知らないソリストになる 4 メロディを重ねるたびに嘘がほらバレていくから早く歌お…

短歌 悲観

1 こめかみがなんか痛むと思ったら背後で君が微笑んでいた  2 低気圧のせいにしようかなにもかも しばらく歩き出せそうにない  3 黒猫が忌み嫌われているように私が居ると薔薇も枯れます  4 苦しみをほどくことだけ考えて…

短歌 妖精

1 番号の中に私の誕生日が隠れてるからスマホごと好き  2 「嫌いだ」と口に出せれば大丈夫 その素直さで生きのびてゆけ  3 石ころは磨けば光るわけじゃない 輝きなんてただの傷あと  4 行列のできる店です みんなして腹…

短歌 恋

1 解像度低めの心携えて行けるところまで行くのが恋 2 スコールのあとあなたが降ってきて少しもできない共感が恋  3 恋のせい ヘッドフォンから洩れ聞こえてきた君の声を遺書にした  4 手のひらに人を何回書いたって喉を通…