Case6.依頼

端的にいえば、ジェラシーである。確かに若さでは負けるが、自分だって毎日メイクを頑張っているし、最新のファッションだってしっかりチェックしている。なのに、想い人はさっぱり振り向いてくれない。それどころか…

Case12.再開

葉山と香織は、はたからみればカップルのように見えるかもしれない。香織がリードして、傘を並べて夜の散歩を楽しんでいるような。しかし、今から彼らが行おうとしていることは、およそデートからは程遠い。 人目に…

Case10.視線

翌日、左手首に包帯を巻いた葉山が出勤したものだから、香織は瞠目した。 「どうしたんですか、それ」 香織はすぐに葉山のもとへ駆け寄った。 「なんでもない。ちょっとした怪我だから心配は無用だよ」 「『ちょ…

Last Case.ひととほし

その女性はその場でくるりと一回転して、葉山にふわりと微笑みかけた。 「苦しかったのね。いえ、今も苦しいのでしょう」 浩輔から解放された葉山は、涙を腕で拭い顔を上げた。 「それでいいのよ。苦しいのは、あ…

Case8.告白

葉山は浩輔の手をするりとかわした。警視庁捜査一課の刑事ともなれば、素人に首元をつかまれたところで造作もないことである。 浩輔に掴まれて乱れた襟元を直そうとして、葉山は「ああ、汚れちゃうか」と手を止めた…

Case4.予言

はるかを元気づけようと香織が提案したのは、ショッピングだった。女子二人ではしゃぐのも悪くないが、より買い物をエンジョイするため、との名目で葉山も同行してもらうことになった。 つまり、下手に隠れられるよ…

Case2.内緒

逡巡する葉山の目の前に、かちゃんと音を立ててコーヒーカップが置かれる。葉山がハッと息をつくと、目の前でコーヒーが湯気を立てていた。 ホスピタリティのかけらもないな、と葉山は内心でつぶやいた。 コーヒー…

Case5.ゆめうつつ

翌朝、隆史が不在のため、いつもより早く開店準備をしようと浩輔は早めのダイヤの電車に乗った。自宅から店舗までは電車で2駅と近いが、たった2駅違うだけで、賃貸相場がかなり安くなることに加えて、星空がとても…

Case7.不穏

娘の莉々が熱を出して以降、時おり隆史は浩輔ひとりに店を任せることがあった。どうやら莉々はあまり体が丈夫なほうではないらしい。隆史はパートナーと離婚しているので、普段は莉々を保育園に預けているが、熱を出…