ふたりの一週間 Colorful days go on.
ひとりとひとりとが出逢って、ふたりになった。孤独と孤独とを掛け算したかのようなモノクロの虚しさが、日々を重ねるにつれ、いつしか彩られていく。これはそんな、ささやかで、それでいてどこかが強烈にずれている、「ふたり」の、なん…
ひとりとひとりとが出逢って、ふたりになった。孤独と孤独とを掛け算したかのようなモノクロの虚しさが、日々を重ねるにつれ、いつしか彩られていく。これはそんな、ささやかで、それでいてどこかが強烈にずれている、「ふたり」の、なん…
ある時、きみは僕の前でシャツを脱ぐのをひどく嫌がった。気分じゃないのかと問うたら、そうではないと蚊の鳴くような声で答える。じゃあどうして、と更にきくことはしなかった。きみの目が、ひどく潤んでいたから。 僕は宮廷作曲家の端…
◈梅雨 雨のなか白い紫陽花を睨んで私の名前を呼ぶのはやめて とある日曜日、小雨のときは傘をささないきみが、ふと公園で立ち止まって「アナベル」という名前の白い紫陽花をじっと見ていた。 みるみる、きみの視線は鋭利になっていく…
昶斗えいとの自覚は、夏真っ盛りのとある夜だ。僕、伊知いちが一人暮らししているアパートで、男子二人であほらしい動画を観ながら酒盛りをしていたときのこと。急に黙り込んだ昶斗は、一筋の汗をあごから垂らしながら真顔で、こう僕に告…
言葉より先に、花はそこに咲いていた。私は貴方が貴方自身を望む以上に、貴方のことを想っているの。 沸騰を知らせる甲高い音で、俺はうたた寝から強制的に現実へと引き戻された。緩慢に椅子から立ち上がり、コンロの火を止める。加工さ…
人は生を受けた瞬間から、終わりへと一方通行で向かう。夜空を彩る星々に比べたら、人間など本当にちっぽけな存在で、人ひとりの苦悩なんてきっと、些末なものなのだ。橋場詩織は本気で思っている、自分の人生なんて誰のかすり傷にもなら…
彼は私の前からいなくなった。事件は彼の告白によって急展開し、即日、彼は逮捕された。それでも、今も彼は私の彼氏で、大切な人だ。 そういえば、二人の写真を一枚も撮っていないことに、今更になって気づいた。スマホを漁ったが、どこ…
すべてを聞いた私は、涙を流しながら、彼の手を握りしめていた。 「何も……何も知らなくて……私。ごめんね」 「どうして智恵美が謝るの」 「だって私、完全に勘違いしてて……夏菜子のことも、全然わかってなかった。そんなことがあ…
入学してすぐに夏菜子が声をかけてきたという。積極的な性格だった彼女は、新歓コンパで同じグループだった桐崎くんに一目惚れしたらしい。 告白こそしなかったものの、すぐに連絡先を交換し、LINEなどで会話をしていたという。 桐…
嫌だ。こんなお別れなんて、絶対に嫌だ。 私は必死で彼のシャツの腕の部分をつかんだ。 「べ、別にいいの」 声が震える。 「殺人鬼なんかじゃなくていい。むしろ、そんなんじゃないほうがいい。お願い、ごめん、謝るから、『さよなら…