あらすじ
奥多摩の柔らかな自然に溶け込むようにたたずむ「奥多摩よつばクリニック」には、他の患者やスタッフには知られていない空間が存在する。
「白い部屋」でひっそりと暮らす青年、裕明。彼は解離性同一性障害(DID)であり、「過去と秘密」を抱えながら生きている。
何も変わらない日々を望み続け、それが叶ったところで少しも満たされることのない人生。彼はかたくなに心を閉ざすことで、そんな自分を懸命に守ってきた。
ある日、クリニックに通院している少女、美奈子が「白い部屋」へ足を踏み入れてしまう。
「運命」などと呼ぶには、あまりにもあっけない二人の出逢い。それでも、二人は信じたい。それは間違いなく、お互いの抱く時計と傷とが、静かに交錯し始めた瞬間であったと。
主な登場人物
江口裕明(21)
「白い部屋」に暮らす、解離性同一性障害(DID)の青年
高畑美奈子(19)
母親からのネグレクトに苦しむ少女
佐久間泰弘(??)
かつて、ある一家を襲った殺人犯
有馬 雪(享年19)
すでに色褪せて遠く去った夏に、自ら命を絶った少女
木内 博(53)
「奥多摩よつばクリニック」院長。裕明の「過去と秘密」を知る人物
岸井恵美(50)
木内のパートナーで奥多摩よつばクリニックの看護師長
小泉メイ(??)
奥多摩のスナック「りんどう」のママ