あらすじ
都内某精神科病棟の日常。
彼はその場所を、「箱庭」と名付けた。
今日もまた、箱庭で繰り広げられるいろいろな出来事。
彼は、決してそれらから目を逸らすことはない。
ただその場に佇み、時おり混ざる幻想と遊ぶ。
「箱庭から歌が聞こえる」
それは妄言か、あるいは悲鳴か、はたまた祈りなのか。
そんなことはしかし、彼にとってはどうでもいいこと。
人々の叫びは消えることはないから、彼はひたすらそれをスケッチする――いつの日か「彼女」へ届けるメッセージとして。
主な登場人物
工藤征二(23)
大学在学時に統合失調症を発症し、現在も精神科病棟に入院している青年
吉田秀典(31)
大学院数理科学研究科に在籍していた、征二と同じ病棟に入院する解離性障害の男性
皆川アキ(21)
征二と同じ病棟に入院する境界性人格障害の少女
虎谷幸広(18)
征二と同じ病棟に入院している元高校球児。衝動的に自傷行為に及ぶ
藤沢浩子(30)
芸術大学在学中に統合失調症を発症後、入院しつづけている女性
佐々木ユイ(23)
征二の恋人で、大学の後輩だった女性
工藤俊一(29)
征二の兄で、高校教師。弟の理解者となれない自らを責め続けている
高橋美和(25)
征二の入院する精神科病棟に勤務する看護師