posted on 2024.11.25
4,5,7
strawberry feels foreverの続きです サイコっぽい男「きみを剝製にしてあげる」 付き合っていた女「そんな……剥製づくりに必要なミョウバン、塩、石膏、ウレタン、すべてが値上がりしてるこのご時世に!?」...
posted on 2024.11.10
面影
独言 私の想いは、幼子の欲求の発露のごとく拙く、月光を吸い込んだ絹糸のように儚い。しかし、それで構わないから、あなたを絡めとりたい。私の言葉で、あらゆる倫理を超越して。 思慕 外山景彦とやまかげひこが弁護士となったのは、...
posted on 2024.9.21
Strawberry Feels Forever
「ぎんいろ」 ゲリラ豪雨が降るのは、もう毎日のことになってしまった。窓に次々と打ちつける雨粒を、きみはフローリングに座って凝視している。日が落ちてきたのでカーテンを閉めたかったけれど、きみはもうしばらく窓辺にいたい様子だ...
posted on 2024.7.20
ありのみのうた
夏休みが始まっても、わたしはあんまり嬉しくない。宿題をたっぷり出されたし、算数ドリルなんて見たくもない。なによりわたしが一番苦手なのが、自由研究だ。何をすればいいのか、全然わからない。 夏休みは「休み」なんだから、勉強な...
posted on 2024.7.9
ふたりの一週間 Colorful days go on.
ひとりとひとりとが出逢って、ふたりになった。孤独と孤独とを掛け算したかのようなモノクロの虚しさが、日々を重ねるにつれ、いつしか彩られていく。これはそんな、ささやかで、それでいてどこかが強烈にずれている、「ふたり」の、なん...
posted on 2024.7.9
ミューズの背中
ある時、きみは僕の前でシャツを脱ぐのをひどく嫌がった。気分じゃないのかと問うたら、そうではないと蚊の鳴くような声で答える。じゃあどうして、と更にきくことはしなかった。きみの目が、ひどく潤んでいたから。 僕は宮廷作曲家の端...
posted on 2024.7.9
なんとなく歌を歌えばそれとなくリズムを刻むきみとの暮らし
◈梅雨 雨のなか白い紫陽花を睨んで私の名前を呼ぶのはやめて とある日曜日、小雨のときは傘をささないきみが、ふと公園で立ち止まって「アナベル」という名前の白い紫陽花をじっと見ていた。 みるみる、きみの視線は鋭利になっていく...
posted on 2024.7.9
こうしてぼくらは
昶斗えいとの自覚は、夏真っ盛りのとある夜だ。僕、伊知いちが一人暮らししているアパートで、男子二人であほらしい動画を観ながら酒盛りをしていたときのこと。急に黙り込んだ昶斗は、一筋の汗をあごから垂らしながら真顔で、こう僕に告...
posted on 2024.3.9
生ぬるい春に整うパズル
言葉より先に、花はそこに咲いていた。私は貴方が貴方自身を望む以上に、貴方のことを想っているの。 沸騰を知らせる甲高い音で、俺はうたた寝から強制的に現実へと引き戻された。緩慢に椅子から立ち上がり、コンロの火を止める。加工さ...
posted on 2023.12.10
ご縁があれば
人は生を受けた瞬間から、終わりへと一方通行で向かう。夜空を彩る星々に比べたら、人間など本当にちっぽけな存在で、人ひとりの苦悩なんてきっと、些末なものなのだ。橋場詩織は本気で思っている、自分の人生なんて誰のかすり傷にもなら...
posted on 2022.12.11
俺のギター道
都内私立大学1年生の篠井久志は、大学生になって初めてギターを持った。マイペースを地で行く彼について、いくつかのエピソードをお話ししよう。 彼は高校生までは生粋の茶道部で、和を尊ぶ少年だった。外見も、黒髪短髪の地味な少年だ...
posted on 2022.4.28
ふたりの一週間 Colorful days go on.
ひとりとひとりとが出逢って、ふたりになった。孤独と孤独とを掛け算したかのようなモノクロの虚しさが、日々を重ねるにつれ、いつしか彩られていく。これはそんな、ささやかで、それでいてどこかが強烈にずれている、「ふたり」の、なん...
posted on 2021.12.11
ガトーショコラの約束
吉田美咲の日課は、三毛猫のマグに朝ごはんをやることから始まる。準備を整えて待っていると、店の奥から澄まし顔でマグがやってくる。冬の足音が聞こえだした街の一角にある、小さな喫茶店の朝だ。 「マグ、おはよう」 当然ながら返事...
posted on 2021.7.19
暇つぶし
僕はしげしげと目の前の少女を見た。少女は不機嫌そうに僕の視線を受け流している。 「邪魔じゃない?」 単刀直入に僕は言った。 「その羽。空気抵抗が」 少女はダンマリだ。 「不利だと思うんだ」 ショートカットヘアの少女は、ま...
posted on 2021.6.22
ゼンマイを巻く
地元のミニコミ誌の取材依頼が来たのは、紫陽花たちが雨に濡れて彩りを増す時期のことだった。 はなみずき通りと名付けられた通りに面したこの店だが、流行のカフェとは違って年号が昭和の頃からほとんどスタイルを変えていない、自分で...
posted on 2021.6.4
朝と灰
(1) 皆川先生が亡くなった。その一報をLINEで受けた夜、僕はタブレットにダウンロードした「ニューシネマパラダイス」を観ていた。トトとアルフレッドの熱い友情に名作の呼び声高い映画だが、僕にはいささか美しすぎるように感じ...
posted on 2021.3.19
たんぽぽ
落ち葉がつむじ風に踊っているのを見ると、たんぽぽのことを思い出す。たんぽぽといっても植物のそれではなく、たんぽぽという名の女の子のことだ。もちろんそれはあだ名で、本名は知らない。出会ってすぐ、好きな花はと訊かれ、僕が特に...
posted on 2020.12.12
ランタン
1. ちりんちりんと軽やかな金属音が耳に心地よい。今日は少し風があるようだ。揺れる風鈴の姿こそ見えないが、季節が確実に巡っているのを感じることができる。 風鈴はいつからあそこに飾ってあって、なぜ夏が過ぎても仕舞われないの...
posted on 2020.8.16
レイナちゃん
嘘だ。全部、嘘なんです。何もかも幻なんです。 午後9時の消灯から9時間はベッドから起き上がることができない。睡眠の確保のために、就寝前にはしこたま睡眠薬を飲まされるから。錠剤だけで腹が膨れそうな量を、ぬるい水で流し込むの...
posted on 2019.5.15
エビフライ
エビフライを揚げていたら、油が跳ねて目に入りそうになった。麻衣子は慌てて洗面所に駆けて、夢中で顔を洗った。というか水で乱暴に何度も拭った。 やだ、どうしよう、跡がついたらやだ。 顔にシミなんて、まだ勘弁だ。 台所から鈍い...
posted on 2019.2.14
置き去りバレンタイン
【カルテNo.3745 皆川亜樹(ミナガワアキ)】 21歳3カ月、女性。境界性人格障害。 大学生。入学当初より、一人暮らしの緊張や慣れない土地での暮らしに疲れ、不眠となる。 アパート近くの心療内科に二年間通院。一年ほど前...
posted on 2018.11.15
物語のはじめかた
シンデレラや白雪姫……「お姫様」は、女子の永遠の偶像だ。幼いころ、毎日寝る前に母親に童話を読んでもらっているうちに、比奈子はすっかり絵本に出てくるお姫様に憧れを抱くようになっていた。 比奈子が絵本など読まなくなった高校二...
posted on 2018.11.15
逝夏
「まるでショパンに対する冒涜よ。そんな弾き方ってないわ」 僕の『幻想即興曲』を水玉はそう評した。 「そうかな」 僕はこみあげる感情と一緒に指先でG#を抑える。反論するわけではないのだが、僕にだってプライドの一片はあるから...
posted on 2018.11.14
虫歯の国のアリス
やせ我慢を決め込んでいたけど、日増しに高まっていく歯の痛みに、芦花ありす(16歳、花の女子高生)は嫌々ながらついにその日、歯科医院のドアを叩いた。 『ハートデンタルクリニック』という、街はずれにある小さなクリニックである...