posted on 2022.8.27
晩夏の五句
ひぐらしに歩を止め祈る友のこえ 受話器から泣き声がして夏の果 はしゃぐ児の影を目で追う夕凪よ 引き出しの出せない文が秋を待つ 天の川いずれだれもがかえる場所
posted on 2022.6.19
夏の五句202206(一)
風薫る洗いざらしのワイシャツよ 涼風よつまびくショパン午後三時 隊列を外れ自由を知る蟻よ 五月雨が地を打ち弾む三連符 へいぼんな日々は宝よ麦茶飲む
posted on 2022.4.1
恋の手帳
うららかよ二度寝こそ世の平和さよ 突然の打ち明け話春一番 シャンプーよ指に絡まる桃の香よ 朧月ほんとうのことだけが要る いぬふぐり踏まれてもなおいぬふぐり ひとひらの桜舞いこむプリーツよ 春惜しむ傷ついてこそ恋ごころ
posted on 2021.10.2
秋202110(一)
紅葉よ燃えて散るとは生き様ぞ 傘の帆に連なる露のきらめきよ 勇ましさ秋刀魚がどんとある夕餉 芒まで手を振り返す帰り道 三日月よふくよかな闇抱きしめて
posted on 2021.9.7
秋202109(二)
枯れてまで寄り添うすすき風に揺れ 名を呼んでなお一人きり秋の朝 秋澄んで大丈夫だと膝こぞう 秋色のシャドウ明日は旅立ちよ なり代わり泣いてくれるか秋の蝉
posted on 2021.8.6
盛夏
蝉時雨どこに終止符置くべきか 祈りの日したたる汗のきらめきよ 後悔をしてこそ響く遠雷ぞ 夢さめて氷水飲む喉もとよ 午睡してバナナひとくち平和の世 手土産のメロン切る母の破顔よ
posted on 2021.8.5
夏202108(一)
窓際でひとり手遊びレモン水 ラムネこそ恋のはじまり告げる味 サイダーを舐めて慄く三毛猫よ 陽光にゼリーを透かす茶色い目 手つなげばアイスも意地も溶けてゆく
posted on 2021.7.30
夏202107(二)
風鈴を鳴らすそよかぜ捕まえて 髪の毛を束ねて恋よソーダ水 七日目の蝉が喚いて日が暮れて 雷鳴よひととせ待つか想い人 虹を見た午後にとなりで笑うひと
posted on 2021.7.8
夏202107(一)
金魚玉梳かれる髪のきらめきよ 公園に休符遊ぶか夏祭り 夏の星いのち巡ってまばたきよ 不可逆か月を睨んでアゲハ蝶 笹舟に託す吾子の灯ほたるとぶ 夕立がなぐさめとなる帰り道 三拍子最後の電話精霊馬 怪談か風なく揺れるぶらんこ...
posted on 2021.6.4
初夏202106
泣きぬれて色づいてゆく紫陽花よ 虹を待つひとに届くかラブレター 梅雨寒よ寂しさと手を繋ぐ夜 夏の風そろそろ前を向くときか トマトこそ恋をしている子の実り
posted on 2021.5.28
初夏202105
プレリュード移ろいゆくか夏の雲 リグレットつばめよ高く飛んでゆけ 皮膚呼吸フットネイルで思い出す アミュレット摘まれる前に散るかりん アンテナが手折られていま入梅か
posted on 2020.12.31
冬~春
約束が輝きを増す聖夜こそ 残り鷺孤独を辞書に刻んだか ゆく年に感謝を告げて涙明け 子どもらの秘密を知るよ雪だるま 鍋囲む笑い声まで美味い夜 目を閉じて心まかせてアゲハ蝶 散る花よいずれそちらへ口結ぶ 人は人思い知るのが卒...
posted on 2020.11.26
都市を詠む
白い息はずませ進む交差点 クリスマス山手線で結んだ手 初雪を同じビルから見るひとよ ビル群はイルミネーションみなひとり 枯木立ひとりで歩く渋谷駅 新宿よ冬の落暉に細める目 肉まんであたたまるのが都市の冬
posted on 2020.11.6
神無月
さよならを見送るだけか秋の風 林檎食む頬に夕陽のさしてこそ 稲妻と落ちる初恋閃いて 目をつむり亡き友と酌む紅葉酒 すすきまで手をふり返すひとりの夜 快速よ待ち人の住む街も秋 オルゴール遠い記憶に照る紅葉 赤とんぼ追い越し...
posted on 2020.9.29
秋202009
ひりひりと右肩が泣く秋の蝶 りりりりとなにが悲しい鈴虫よ どんぐりと寂しさ分かつ手のひらよ 驟雨まで私を責めるため降るか アキアカネ恥じらい消えてしまうまで 厳かに影を伸ばしてひらく桔梗 白亜紀も湿らせたのか秋時雨 見上...
posted on 2020.6.13
梅雨
雨音のスタッカートに踊る恋 ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく 濡れそぼり仰ぎ見る天のモノクロ 蜘蛛の巣も宝石になれ垂れ滴 雨傘をくるりくるりとゆるむ頬 葉の裏のカタツムリこそド根性 長電話すっかり雨もやんでおり ふくよかな母...
posted on 2020.6.7
夏
目を閉じてそれでも灯る蛍火よ 子のいのち託した蛍去ってゆく 雨傘の柄に重なったふたりの手 紫陽花にスマホを向ける老いた父 結ばれず自由を知った夏の蝶 クーラーのリモコン権が火種とは よく冷えた瓶に頬寄せ笑う子よ 扇風機若...
posted on 2020.5.14
わたしの初夏
【行事】 後悔も思い出であるこどもの日 背伸びした柱の疵に父笑う 母の日に贈る笑顔の花束よ 【時事】 距離を取ることもあるまい蛇苺 自粛してひとりでに舞うドーナツ盤 麻マスク手垢の意味を問い直す 【恋】 水玉の覚悟を決め...
posted on 2020.4.11
春202004
小包をほどく笑顔に春が来る 書きかけの恋文にひとひらの花 思い出の隅に映えるよチューリップ 少年の道しるべたれ春北斗 帰りみち綿毛を吹けば歌になる 日めくりとともに顔出す葉桜よ シクラメン三連符まで連れてくる 四月馬鹿い...
posted on 2020.3.16
春202003(二)
花吹雪すべて忘れてしまおうか 叶わない恋ならいっそ蝶となれ 草の芽とともに天指す無垢な指 花として歩いてゆけと祖母のふみ いさかいも花の下ではほどかれる たんぽぽをたんぷぷという子がひかり ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜...
posted on 2020.3.7
春202003(一)
花吹雪すべて忘れてしまおうか 叶わない恋ならいっそ蝶となれ 草の芽とともに天指す無垢な指 花として歩いてゆけと祖母のふみ いさかいも花の下ではほどかれる たんぽぽをたんぷぷという子がひかり ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜...
posted on 2020.2.23
春202002
鷺の巣に手を伸ばしたらそよぐ声 春雷よ私の恋をごまかすな 東風を知り戻れぬ日々にただ涙 放課後の口笛とける春の闇 厳しさは優しさだった春一番 芽吹きとは前を向くための道標 寄り添うとすぐにほころぶ梅ときみ 遠い自由に憧れ...
posted on 2020.2.6
梅
ぷっくりとふくれる頬と梅つぼみ 梅の香が考えごとをさえぎる夜 生き急ぐこともあるまい花の兄 目覚ましに梅干しひとつ受験生 手のひらに梅の花びら母わらう ペンネームの由来にした春便り からころと楽しい梅の花の散る 冬の梅こ...
posted on 2019.12.22
クリスマス
ろうそくを吹き消してまだ残る影 児の期待踏みしめておけサンタさん クリスマス百点満点として笑む ハズレなし優しい夜を引き当てた 雪を待つ人に届いてほしい歌 鈴の音が幻でもなお嬉しくて 微笑みもオーナメントだ木々揺れる お...
posted on 2019.10.27
花
やせがまん モンブランまで敵とする 口笛を聞いてくれるよ秋の雨 もうドアを閉じてしまうね吾亦紅 突き詰めて結ぶりんどうの紫 お願いよ海猫帰るまでここに さよならがなぜに尊い藍の花 愚かさに輪をかけてゆく夕化粧 ...
posted on 2019.10.17
味覚
寝過ごして出会う高尾の山紅葉 台風はため息までも奪ったか 生秋刀魚 次会う時が百年目 銀杏が隣で爆ぜて緩む頬 焼き鳥が旨いお店の名が花鶏 秋桜と生き急ぐのを競いあう 冬支度 母となれない虚しさと
posted on 2019.9.26
カラス
しわくちゃの笑顔に結ぶななかまど 誰もみな孤独であるとカラス鳴く 蜘蛛の糸 夫婦の意味を問いかける ラグビーのルールを知らず酌み交わす 命日は忌念日らしい彼岸花