短歌 ちゃんと笑うよ

1 うん、でもね証拠は? なんて言われても事実は変わらないと思うよ 2 あの月はくじらの夢に顔を出し漂う意味をわたしに許す 3 ことなかれ主義が正しい顔をする教室 でも風はいつか吹く 4 できることよりもできないことを知…

短歌 ああ

1 春なのにいや春だから怖くなるきみの鼓動が優しすぎると 2 波風を立てない範囲で暴れてたあの子もあの子も四角いあたま 3 誰よりもきみが好きだと伝えてもきみは誰よりきみが好き ああ 4 散ってゆく桜は好きだそのうちにふ…

短歌 感じるために

1 あの鳩も夢を見ている飛べるはず飛べるはずって叶わぬ夢を 2 親指の爪に灯った三日月を噛んでふくめてきみを見上げる 3 未来から来たと言い張るおじさんが駅のホームで鳩に追われる 4 それで今あなたは飯を食えている私の傷…

短歌 るる

1 からっぽの鳥かごに手を突っ込んで「いない」とこぼすきみの黒い目 2 微笑みに西陽がさして浮き上がる君の本性をきみは知らない 3 花のした唯一無二になりたいと願えばざあとさざめく彩度 4 水槽をずっと見ているきみの目が…

短歌 ああポエムだよ

1 玉ねぎをこれでもかって薄くするトラウマだって生で食べるよ 2 ポエムかよ ああポエムだよあいつらの思う数倍あたしは素敵 3 永遠について思考を試みるシャットダウンは不可避であった 4 シリアスな顔して差し出す小箱には…

短歌 まあ夢だけど

1 どうしてもそれがさだめと言うのならドロップキックで軌道を変える 2 この管を抜いたらきみの待つ家に帰れるのかなコートは何処だ 3 血の赤さ 生きているって確認は一日二回までにしましょう 4 喉の奥にずっと居座る吐き気…

短歌 オブラート

1 待ってくれ 切なくない失恋 とか そもそも 恋 じゃ なっかたので は 2 本音だと怒られるから巻きつけたオブラートの味しかもうしない 3 どうしても正解だけがほしいのかタラバのガニは食べちゃだめだよ 4 アドバイス…

短歌 ひりひりするね

1 ファイティングポーズじゃなくて寒いから猫のポーズを試みたのに 2 殺す気か! ってよくあるツッコミにニコリともせず満月の下 3 髪の毛を上手く巻けても舌先に口内炎がいる日常だ 4 えらいひと心許せる友達がいないがゆえ…

漆黒の獣

目の前の花瓶に陽光が通過して、この白い壁面にプリズムが差したところで、きみはその色彩に全く興味を示さない。 僕は、考えている。朝起きてあくびをするとき、この部屋のカーテンを開けるとき、朝食の卵をサニーサイドアップにすると…

短歌 胸を張りなよ

1 ファミレスで映画のオチが漏れ聞こえナイフを握るきみを制する 2 「疑う」を常時こころに留め置いて渋谷で笑顔の人を避けよ 3 爆弾の中身をすべて花びらに変える魔法を今こそ使う 4 晴れすぎてしんどくなると傘をさすわたし…