短歌 ひりひりするね

1 ファイティングポーズじゃなくて寒いから猫のポーズを試みたのに 2 殺す気か! ってよくあるツッコミにニコリともせず満月の下 3 髪の毛を上手く巻けても舌先に口内炎がいる日常だ 4 えらいひと心許せる友達がいないがゆえ…

漆黒の獣

目の前の花瓶に陽光が通過して、この白い壁面にプリズムが差したところで、きみはその色彩に全く興味を示さない。 僕は、考えている。朝起きてあくびをするとき、この部屋のカーテンを開けるとき、朝食の卵をサニーサイドアップにすると…

短歌 胸を張りなよ

1 ファミレスで映画のオチが漏れ聞こえナイフを握るきみを制する 2 「疑う」を常時こころに留め置いて渋谷で笑顔の人を避けよ 3 爆弾の中身をすべて花びらに変える魔法を今こそ使う 4 晴れすぎてしんどくなると傘をさすわたし…

短歌 ヤッ ウッ

1 さみしいはさびしいよりもさみしいしさびしいはさみしいよりさびしい 2 さびしさに潰されそうな夜のためシュークリームはコンビニにいる 3 擬態語について議論をし続けてドリンクバーで始発を待った 4 秘めるのが苦手になっ…

短歌 メトロノーム

1 伏線の回収業はオプションでどんな帳尻でも合わせます 2 身を守るためにまとった繭なのに暗い冷たい寂しいくさい 3 トラウマが疼いていても言い訳にだけはしないよ 頬に木枯らし 4 たぶんまだ気づかれてない煩悩だネイルオ…

短歌 だめなひと

1 だめな人がこのクッションに座ったらちゃんとなれると思って買った 2 あれは星? それとも人工衛星? どちらにしても消えてゆくけど 3 絶望をする価値もないこの脚で地を踏みしめて空き缶を蹴る 4 雨じゃない降っているの…

短歌 終点

1 突っ走る特急が万が一終点で止まらなくても構わないって 2 くたびれて肩に頭を置いたなら終点なのにきみは動かず 3 ありがとう、みんな大好きだよ。なんてフラグっぽいから絶対言わない 4 万が一死亡フラグが立ったならその…

短歌 誘蛾灯

1 見守っているとあなたは仰るがそれは見張りとどう違うのか 2 パレットに黒と白しかないなんてその身に巡る血を思い出せ 3 素数より美しいものを知らないこの人生は上々である 4 誘蛾灯ぜんぶ折ってもいいですか許可されなく…

今日の短歌 変わらない日々

1 コンビニでアイスを買ってダッシュしてふたりの夏はそれでも溶けた 2 ケンカしてそっぽを向いた夜なのにJUNKのせいで笑うしかない 3 前髪を切っても気づくきみじゃない目くばせしてもウインクされる 4 自転車のカタログ…

今日の短歌 アマエビ

1 はつなつの夜の休符よあとがきを恋文みたく指でなぞって 2 月のない夜になるから寂しさをコーンスープに溶いて分けあう 3 走り梅雨 いつか別れがくるなんてとっくにしってるよだいじょうぶ 4 ワイシャツがはためく午後にラ…