短歌 いいけど

1 毒を吐くのはいいけれど「毒を吐く人なんだな」と思いはするよ 2 唇が割れて味わう血の味に慣れることなく来る誕生日 3 指先の乾燥が自己像を偽るおいiPad私だってば 4 「考える」なんてそのうち人間の営みからは消える…

短歌 涙を借りる

1 曇天にこっそり添えた針の月きみに見つかる前に帰ろう 2 このどこを裂いても赤い血が出るのだからあんまり笑わせないで 3 日曜日なんて金魚は知らなくて医院の隅でいつも通りで 4 愛の鞭だろうが痛いものは嫌っていうか愛は…

短歌 まぁるい

1 「わかるよ」で途切れた会話 受話器越し震えてる声ああ雪になる 2 (人間は箱の外では最弱の被捕食者である)こたつ大好き 3 部屋、スマホ、パソコン、みんな箱わたしの好きなものはまぁるい 4 もうぜんぶ気圧配置のせいに…

短歌 胸を張りなよ

1 ファミレスで映画のオチが漏れ聞こえナイフを握るきみを制する 2 「疑う」を常時こころに留め置いて渋谷で笑顔の人を避けよ 3 爆弾の中身をすべて花びらに変える魔法を今こそ使う 4 晴れすぎてしんどくなると傘をさすわたし…

短歌 ヤッ ウッ

1 さみしいはさびしいよりもさみしいしさびしいはさみしいよりさびしい 2 さびしさに潰されそうな夜のためシュークリームはコンビニにいる 3 擬態語について議論をし続けてドリンクバーで始発を待った 4 秘めるのが苦手になっ…

短歌 ほぼほぼ恋だ

1 星の降る夜に限って味噌がないコンソメもない散歩に行こう 2 ドリアって半端な気持ちで頼んだら火傷するとかほぼほぼ恋だ 3 諍いを仕留めてしまう激辛のカレーを求め下北沢へ 4  怒ってる? きみが怒っていることを全く気…

短歌 着狂

1 花束を抱きしめる人は誰もが花に抱きしめられていること 2 餅つきは無理をしちゃだめ餅つきでなくても無理はしないでほしい 3 困りますくしゃみひとつで深刻な顔して髪を撫ぜられましても 4 先生が一般人に戻っても私にずっ…

短歌 ひょろ〜〜

1 おせちには初日の午後でもう飽きた意味を持たないものが食べたい 2 もしかしてそれ春の海? ひょろ〜〜ってとこぴろ〜〜でもいい? 3 近すぎてわからなくなる大切なことだからこそ距離を置きたい 4 お薬のもう半分は暴力で…

短歌 黒歴史

1 モミの木の撤去作業もこの時期の風物詩って呼んでいいよね 2 あってくれ神よ奇跡よ真実の愛よ全てに舌を出すから 3 黒歴史白い初恋青い春管を流れるおかしな血の赤 4 クエスチョンマークを「はてな」って言う人とドーナツ盤…

短歌 こめかみ

1 慟哭を胸の奥底に閉じ込めきみはいちごを最後に食べる 2 ジャムもいいそのままもいいあれこれを間違えたってきみは正しい 3 こめかみに居座る声に狼狽えて「誰か」と呼べば私がいるよ 4 抱きしめる天に中指突き立てて笑われ…