短歌 こめかみ

1 慟哭を胸の奥底に閉じ込めきみはいちごを最後に食べる 2 ジャムもいいそのままもいいあれこれを間違えたってきみは正しい 3 こめかみに居座る声に狼狽えて「誰か」と呼べば私がいるよ 4 抱きしめる天に中指突き立てて笑われ…

短歌 BY AIR MAIL

1 生真面目に首を振ってる扇風機に人さし指を深く突っ込む 2 お手紙を書いてみました彼岸には BY AIR MAILで届きますか 3 適切に検討しますしっかりと議論を重ねあとは知らない 4 「満月はよつ葉バターのパンケー…

眠れない夜に揺れるフェイクパールのピアス

「眠れない」 彼のその一言で、深夜のサイゼへ繰り出すことになった。玄関を出てすぐ、師走の冷えきった空気が頬を鋭く刺したから、ああ、ちゃんと冬なんだな。なんて当たり前のことを、しみじみ思ったりした。 サイゼが24時間営業を…

短歌 ただいま

1 踏ん張ったのは私だけじゃなかったプラごみの山に見える美学 2 ただいまを言ってもらえると思った無人の部屋にさす冬の陽光 3 来年の干支がへびだと思うとき今年は辰と思い出してる 4 流星を見ようとドアを開けたけどきみは…

短歌 オービス

1 落ちている小鳥へ向ける祈りあり雑踏に溶けるきみの視線は 2 祈りますきみがそのままきみらしく私を殺したくて在ること 3 約束は生きていくよの宣言だオッケー、みんな死ぬまで生きろ 4 ささくれのたったひとつも許せない夜…

短歌 メトロノーム

1 伏線の回収業はオプションでどんな帳尻でも合わせます 2 身を守るためにまとった繭なのに暗い冷たい寂しいくさい 3 トラウマが疼いていても言い訳にだけはしないよ 頬に木枯らし 4 たぶんまだ気づかれてない煩悩だネイルオ…

短歌 雨になる

1 土曜日があなたのせいで雨になる好きにならないわけないだろう 2 癒されてほしくない傷だってある生々しいと美味しそうでしょ 3 風船は割れてはじめて風船を欲しがった日に音符を添える 4 燃え盛るほどに心は弱くなる焼き場…

ふたり/中指

雪解けは終わりの合図、春 そしてきみは言うんだ 「はじめまして」って 笑顔が似てきたね、と藍子に言われて以来、ときどき鏡に向かって笑ってみる自分がいる。夫婦は似るものだとよく言われるけれど、私たちも例外ではないようだ。 …

短歌 いいにおい

1 ありがとう、みんな大好き。なんてフラグっぽいから絶対言わない 2 万が一死亡フラグが立ったならその折り方を教えてくれよ 3 師走入りいて座のきみは誕生日近いことなど気にしていない 4 おきてる? ときいてくれたのに …

短歌 終点

1 突っ走る特急が万が一終点で止まらなくても構わないって 2 くたびれて肩に頭を置いたなら終点なのにきみは動かず 3 ありがとう、みんな大好きだよ。なんてフラグっぽいから絶対言わない 4 万が一死亡フラグが立ったならその…