短歌 冬のはじまり

1
寒いより寂しいが勝っているとまだ貴方には伝えられない

2
強がりは積もれど雪にならなくて遠くで白が手を振っている

3
背中から羽が生えても安心だ 君が残らず毟ってくれる

4
いま君が隣で風邪をひいていることが実は嬉しいなんて内緒だ

5
クリスマスソングまみれの街に落つ天使はマッチに希望を灯す

6
錆びついた路傍の鍵に冬を見る 君は確かにここにいたのに

7
冷え切ったトーストにのせたママレードの気持ちになり謝って

8
受け取ったものがあまりに多すぎてしばらく歩けそうにない冬

9
見抜けない嘘は冬のはじまりと教えてくれた嘘つきが好き

10
濡れたシャツが乾くまでの辛抱だ 世の取り沙汰も七十五日