晩秋の傘

1
のど飴の優しさを知る晩秋にほんのりと死に近づいてみる

2
思い出よ 積もれ積もれよ落ち葉より軽いからなお悲しさも増す

3
嘘つきも人が恋しくなるらしくぬくもりのためまた嘘をつく

4
雨やどりしていいですか今日きっとあなたのために私泣くから

5
せせらぎを眼下に走る箱根路の渋滞すらももはや嬉しい

6
風船を手放した日に少年が耳にしたのは「じゃあねバイバイ」

7
夕映えにインスタ映えを重ねたと隣で咳をする人に告ぐ

8
誰かさんが見つけた秋も深まって行方不明になってしまった

9
セアカゴケグモやヒアリもこの国の冬に馴染んでイルミネーション

10
数知れぬほどの命を食んでなお生きる意味なら鈴虫にきけ