レインツリー

あなたはレインツリー

両手を広げて分裂する

あなたはレインツリー

地球を抱きしめて干る

なにもかも

アイシテル

のせいかな

テールランプの明滅に

揺らぐ自我を投影して

脳内ではオルゴールが

逆再生でカノンを奏で

苦しいってか

虚しいってか

全部籠の中だ

あなたはレインツリー

護られているはずでも

あなたはレインツリー

凪の夜には隠れて眠る

特に、これといって深い意味はないのです。ただ一つだけ申し上げて良いのならば、彼は「鍵」たりえる存在だということでしょうか。

彼を受け入れるか、拒絶するか。誰とも共有できない感覚と感情のみで存在する彼の、その瞳の茶色は、街にかかる虹を掻き回したときの色と同じ。それをどう捉えるか、です。

(どうぞご自由に)

とにかく、彼は「鍵」なのです。世界というぽっかり空いた穴に突き刺さるために、メダリオンの上等な黒い革靴を履いているのです。

歩くたびに地球は鳴きます、カツカツ、

いい音だね、もっと聞かせておくれよ、

タップダンスでも踊ったらいいのかな、

そうしたら振り向いてくれるだろうか、

(悲鳴のひとつも上げないで)

あなたはレインツリー、

誰にも認識されず佇む、

あなたはレインツリー、

たった独りで揺れてる、

(蝶々結びは嫌い)(怖いから)

(怖い)

あなたの目には目の前の

世界がどんな風に見えて

それをどう殺してくれる

それをどう殺してくれる

あなたはレインツリー

という名の孤独なのに

あなたはそのことさえ

知りもしないでいるね

御託はいらない、ただただ、

愛されたくて寂しいのです。

(それが、どうかしましたか。)

あなたはレインツリーとして在る

この世界の孤独を枝から生らして

優しい人がもいでくれるのをただ

待つしかないのよ、レインツリー

地面を蹴って

泣いて喚いて

悲鳴を上げて

悪夢を求めて

孤独を売って

叫んでも逃げても

虚しくなるばかり

あなたは過去形だ

鍵穴がこの私なら

今すぐ貫いてくれ