短歌 晩冬

1
芽吹いたら底を知らない恋心 晩冬の空に毅然とあれ

2
「ありがとう」と「愛してる」の言の葉はくすぐったさがとても似ている

3
灰色の冬を脱ぎ捨て街に出よ 小さな春を捕まえにゆけ

4
届かないことは同時に尊さを伝えることだと気づいた喪服

5
iPhoneの画面にたぶんアイはない eyeで追うのは虚しさばかり

6
あの日から心に決めたことがある 何が何でも生き延びてやる

7
疲れたら詩歌を食んでみるといい 吐き出したって美しいから

8
ガムシャラに走った日々も懐かしく香を燻らせ見つめてる今日

9
いい加減泣いてもいいと君の声 それゆえ私は歩いてゆける

10
傷ついた、それはいま生きている証 誇れる日まで大切にせよ