短歌 バス停

1
ゆりかごは遠くにあって手を伸ばす理由もなくて夏が去ってく

2
セミたちの声にまぎれてから笑う そんなあなたがやっぱり好きだ

3
木陰から顔を突き出すバス停よ 優しい街に連れてってくれ

4
光から逃れるために明日など何処にもないと言い聞かせている

5
アスファルトに落ちたセミの抜け殻を踏んで己を空蝉と知る

6
好きなだけ私を責めて構わない それがあなたの限界だから

7
君の骨 小皿にのせて眺めるとなぜかくしゃみが止まらなくなる

8
「おかえり」を言わせてほしい いつかまた人間として再会したい

9
麺つゆを薄めすぎたと後悔しなんだかんだで笑いあう今日

10
暗闇の中で見つけた幸せはずっとポッケにしまってていい