人はたやすく過ちを犯すね
過ちを過ちと知っていながら
何度も繰り返し過ちを犯して
それらを葬ってしまうのだね
人は簡単には変われないと
可能性の芽を摘み取るばかりの
愛と正義を自称する大合唱はやがて
足並みを揃え堅牢な合言葉に辿り着く
聞くだけで耳が腐りそうなアレさ
「しょうがないじゃない」。
オルゴールの城が崩落したよ
あなたにはもう
優しい歌はきかせてやれない
鼓動はいつも三拍子だったね
不安げな瞳を臆することなく
合唱団へ胎盤ごと投げつけた
(今夜、子守唄と悲鳴どっちが聞きたい?)
それが精一杯の逆襲だったのかい
いくらなんでも優しすぎたんだよ
ほら見ろ、合唱団は無傷で胎盤を啜っている!
あなたがそんなに苦しんだのも
彼の人が決して元に戻らないのも
私の零す言葉が地球に還れないのも
しょうがなかったと彼らは歌う
私は落城したオルゴールの中で
合唱団がしがみついている
あるいは信奉してやまない
出来合いの愛と正義とやらを
身勝手なものさしで採寸する
いっとう切れる裁ちばさみでぶった切る
あなたによく似合うカーディガンを
次の満月に間に合うように妄想の糸で
きちんと仕上げてみせるから
あなたはあなたで
もう優しくなんてならなくていい
塞がりっこない傷口に
きれいな水と月光を浴びせて
しっかりと爪を研いでおくんだ
駅前公園の桜が七分に咲んだら
それが揺るぎない合図さ
「等しい」終幕に向かって
堂々と合唱団に突っ込むがいい
ピンクのネイルが素敵ね
傷を知らない者など信じないし
傷を恐れる者などに興味はない
どうせなにもかも時限仕掛けだ
鼓動の許すまま踊り尽くして
過ちを過ちのまま放置して成り立つ
彼らの愛と正義を思う存分
踏みにじろうじゃないか
私がここで黙ったところで
彼らは繰り返し叫ぶのだろう
しょうがないって
あなたが堕ちたところで
彼らは慈愛すら携えて歌うのだ
しょうがないって
ひとりが怖かったら私がここで
いつだって新しい糸を紡いでいるから
あなたはあなたのままで
あなたの好きなように
どうか生き延びてほしい
間違っても合唱団には入らないで
もしもその時が訪れたら
私があなたに引導を渡しに行きます