短歌 凝視

1
だれひとり僕を知らない街にいて「こどく」の意味を僕は知らない

2
輝けと命令するな僕はまだ正しい呼吸もわからないのに

3
夢を見て初めて気づくこともある 今日も明日も燃えるゴミの日

4
カラカラと軋み続ける僕の骨 どうぞ笑ってお湯を注いで

5
取り返しつかないことの連続で手首の傷に噛みつくみんな

6
愛すべき人などいない愛したい人がいただけ 口をつぐんだ

7
ひねくれたフリをしていたはずなのに憧れがまた背中を向ける

8
悲しいとまばたきが下手になる僕は君の傷から目を離せない

9
終点があるのだどんな列車にも命にもこの痛みにさえも

10
幻が優しい日には目を閉じて二人そろって壊れてもいい