夕闇に染まる帰り道で
汚れた十円玉と一緒に
小さな首が落ちていたもので
縫い合わせてみることにした
不器用なもので針で中指を刺してしまい
ああ、と言ったきり言葉が出なくなった
窓越しに快速電車を見送ったあとで
誰かの悲鳴(或いは笑い声)がして
波縫いよりも月並みで且つ
神話のような奇跡が起きた
命だった何かがじんわり滲んだ
ボロきれで繋ぎあわせてみたけど
独りよがりなため息だけが漏れた
カーテンの上の三日月は不機嫌で
本能のみで縫い上げた布が貪欲に
さっき顔を出した血を吸い上げた
ふつ、と蠢いた目玉が詩を詠んだ
出来上がったものをぱっと広げたら
あ!
なんだ昨日見送った君じゃないか
なんだ
なんだ
今夜はきっとシチューがおいしい
理由はない
今夜はきっとシチューがおいしい
ママの作ったシチューがおいしい