短歌 赤血球

1
醜さの喩えに使うためだけに私に合鍵なんてくれたの

2
私たち一緒の部屋で呼吸することさえ今や疑っている

3
なにもかもどうでもいいと言うのならその指輪から外してみてよ

4
骨として去っていく者 「思い出」と「平等」の意を辞書で調べろ

5
幸せになれという命令形が今も私に不幸を強いる

6
傘を持つ右手はずっと震えてた 左手と虚無だけが味方で

7
疑えば疑うほどに遠ざかる私がずっと求めたほんとう

8
さらさらと目の前を征く赤血球 浮かび上がった好きだったひと

9
抱きしめちゃいけないなんてことないし泣いてもいいし笑ってもいい

10
おやすみはおはようをまた告げるため忘れちゃいけない魔法の呪文